2024年4月26日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2022年2月13日

それでも「監視社会」が理想ではない

 ただし、中国のコロナ対策が決して理想の形ではないのだろう。高口氏は「オミクロン株への水際対策として、行き過ぎた部分も散見するようになっている。国際郵便や海外産のフルーツが感染源の可能性があるとされるや、荷物を受け取るたび、フルーツを購入するたびにPCR検査を義務化している。本当に必要なんだろうかとも思うし、これはもはや個人の行動管理の域に達してしまっていると言える」と指摘する。政府が感染対策を錦の御旗にスマホ決済から誰がどこで何を購入したのかを把握できることを意味している。

 中国はいつまで〝ゼロコロナ〟対策を進めるのか。北京冬季五輪までとの見方もあるが、「秋には党大会など中国におけるビッグイベントは続く。そもそも今の対策が進められたのは、習近平の〝鶴の一声〟から。終わらせるまたは転換をする時も習近平が選択するしかできない」と高口氏は語る。

 「デジタル監視に関しては、コロナにより世界が冷静な視点で見られなくなっている。権力者による濫用は許してはならないことを心に留めておかないといけない」と高口氏は話す。しかし、それはデータ利用をしないという訳ではないない。データ連携や活用というのは、技術的にもビジネス的な潮流としても避けられない。インターネットを活用したターゲティング広告がその良い例だ。

 「日本としては、データ統合をしながら権力への監視を光らせられる政策と社会の仕組みを作っていかないといけない」。高口氏は強調している。

 
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