2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月2日

 更にWTOの紛争処理は、国際約束により設けられたもので、二国間で自助により泥仕合をするよりは余程秩序だっている。長い目で見れば一層安定的な問題解決に資する。

 加盟国は大いに中国を訴えれば良い。紛争手続きはWTOの時代になって格段に強化され、今日多くの問題が提起されていることは事実だ。そうであれば早くWTO改革をし、関連規定の改正、強化をすべきだ。上級委員会を再稼働すべきだ。

他にもある中国のWTO規範無視

 昨年11月28日、リトアニアは台湾の外交事務所の設置を認め、同事務所を「台湾代表処」と呼ぶことを許可した(機関の名称を「台北」のかわりに「台湾」と表記した)。中国はこれに対して「一つの中国」という原則に違反したとして、リトアニアとの外交関係を大使から代理大使級へ格下げし、リトアニアからの商品の税関通過を拒否したり、中国に輸出しようとするEU企業にリトアニア産原材料をサプライチェーンから外すよう圧力をかけたりしているという。

 中国は2月9日、リトアニアからの牛肉の輸入申請を受け付けないと発表した。中国の措置は、WTOの最恵国待遇や数量制限撤廃などの規定に違反すると考えられる。政治目的のために貿易を使うのはWTO違反である。

 今回中国の措置は、関税貿易一般協定(GATT)に規定のある安保例外とも関係がない。このような中国によるあからさまなWTO規範無視は、大麦とワインに係る対豪州措置にもみられる。豪州もWTOに提訴したことは、当然である(パネル設置が進行中)。なお中国は、台湾との関係強化を示唆するスロベニアにも圧力を掛け始めていると言われる。

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