2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年1月12日

 2021年12月15日、バルト海の小国リトアニアは、すべての外交官とその家族を北京にある大使館から撤収させた。リトアニアが「台湾代表所」を設置したことに対して中国政府がリトアニアに圧力をかけ、12月14日までに中国に駐在するリトアニア外交官の身分証明書の返還を求めていた。リトアニアは、外交官らの安全確保のため、早急の帰国を命じた。

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 12月18日付英Economist誌は、リトアニアの「台湾代表事務所」の設置で、中国がリトアニアとの外交関係を大使館から事務所に格下げすることを一方的に決定し、これに対しリトアニアは外交官と家族を撤収し大使館を一時閉鎖したことを解説する記事を掲げている。

 リトアニアが「台湾代表事務所」を認めたことに何等非がある訳ではないが、「台北代表事務所」とするよう台湾に求めたとしても、 台湾はこれに応じたであろう。友好的な態度を示すリトアニアとの関係促進の機会をそのようなことで無にする理由はなかったはずである。

 他方、中国の行動は彼等の原則に従った行動ということであろう。類似のケースを抑止する意図であろうが、敵を増やすだけで賢明な行動とは思われない。名前の問題が理由で、8月10日、中国は 相互に大使を召還することを要求し、11月に「台湾代表事務所」が 正式に承認されたのを受けて、11月21日に外交関係を双方の事務所の関係に格下げすることを一方的に決定し、この記事に説明のある事態に発展したものである。 

 もとより、背景としては、5月にリトアニアが「17+1」から離脱したこと、8月にリトアニアの当局がHuaweiやXiaomiの5Gのスマホに安全上の欠陥があることを公表したこと、10月に台湾の経済ミッションがリトアニア(およびチェコ、スロバキア)を訪問したこと、11月にリトアニアの議員の台湾訪問が計画されるなど、中国が非友好的と見做す行動が続いたことを指摘し得よう。 


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