2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月9日

 他方、世論調査によれば、これまでのバイデンのロシア政策を評価する者より、評価しない方が上回っているとの結果もあり、議員と有権者の間に認識のずれがあるとの見方や、また、いずれにせよ米国民の関心は、インフレ、雇用、治安、コロナ対策等にあり、ウクライナ問題はそもそも中間選挙の争点とならないとの見方もあった。

 今後は、共和党はバイデン政権の制裁措置は不十分で弱腰であるとの批判を強めるであろう。これはトランプの代弁者や側近が、ウクライナへの関与自体に反対していたことと矛盾するが、トランプも豹変して、自分であればもっと効果的な制裁ができると言い出すのではないか。

 しかし、今後、更にウクライナ情勢が深刻化した場合、ロシアの侵攻を防げなかったバイデンの責任論よりも、バイデンのロシアに対する制裁と西側の団結の姿勢への支持が高まる可能性もあるだろう。ウクライナにおける悲惨な状況やロシア軍の残虐行為の映像が溢れ、国際社会も反プーチンとなれば、米国世論の潮目も変ってくることを期待したい。

ロシア制裁を争点化する可能性も

 バイデン政権およびG7は、追加制裁として、ロシア主要銀行5行に対する取引制限、ハイテク製品の輸出制限のみならず、国際決済システム(SWIFT)からの締め出しやエネルギー関係決済にも踏み込む姿勢を見せ、西側諸国の団結を示すようになった。バイデン民主党としては、むしろ対ロシア制裁の是非を争点化して共和党のトランプ離れを促すとの戦略もあり得るのではないかとも思われる。

 今後の事態の成り行きは流動的であるが、プーチンは、軍事侵攻は、ウクライナの「非武装化」が目的でウクライナ領土の占領は計画に無いと述べたが、最早プーチンの言うことは全く信用できず、少なくとも東部2州全域の占領、更には、ウクライナ全土の掌握、ゼレンスキー政権を転覆して親露傀儡政権の樹立を目論んでいるものと見られる。いずれにせよ、制裁が直ちには効果を生ずるわけではないので、対ロシア制裁が長期化することは確実であろう。

 今般のプーチンのウクライナ侵略は、ポスト冷戦の欧州の枠組みを根底から覆すのみならず、戦後の国連憲章を核とする国際秩序を崩壊させる露骨で悪質な国際法違反と云わざるを得ない。これを見逃せば、核兵器国は非核兵器国の主権や領土を好き勝手に蹂躙できることになり、ジャングルのルールが支配することとなってしまう。

 従って、国際社会は一致して対ロシア制裁を徹底して行う必要があり、制裁の効果を減殺するような第三国にも対応する必要もあろう。この問題がロシア問題に限定されるのか、あるいはグローバルな冷戦が復活するのかは中国の対応にもかかっているのではなかろうか。

   
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