ブッシュ政権時代に国家安全保障会議(NSC)と国務省に勤務していた、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)外交・防衛政策担当ディレクターのコーリ・シェイクが、バイデンの対露政策を批判する論説を2月11日付ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に掲載した。
ウクライナ情勢は緊迫状態が続いているが、最近の欧米メディアにおいては、バイデン大統領の対露政策の対応や手法を問題視するものも目立っている。特に、NYT紙は、2月11日付で、このコーリ・シェイクの投稿の他に、オバマ時代のウクライナ担当の国防次官補代理であったエブリン・ファルカスが、クリミアなどへの対応が不十分であったとして誤りを繰り返すべきではないとして、より強硬な政策を求める投稿を掲載している。
シェイクの投稿は、バイデンのリーダーとしてのマネージメント全般にも関するものでもある。シェイクは、バイデンの最大の問題は、ウクライナ危機の初期の段階で米軍をウクライナに投入しないことを明言したことであり、これによりロシアは安心して軍事介入の準備を進めることになったと指摘する。
シェイクは、その背景として、安全保障チームに意見を同じくする昔の部下らを任命し政権内でしっかりした議論をせずに、自分の好む政策決定を行っている結果、人権外交、貿易政策、対中国政策、更にはアフガニスタン撤退などの失敗を引き起こしているのもバイデンの責任であるとする。
ロシアは、その要求を実現するため正規軍10万人をウクライナ国境に集結し軍事演習を行っている。この段階で既に、国連憲章第2条4項の「武力による威嚇」の禁止義務違反の疑いが強い。また、仮に正規軍が国境を越えれば、明らかな武力攻撃、或いは侵略行為であり、憲章51条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」の行使の対象となる事態であり、米国はウクライナを軍事的に支援する集団的自衛権を国際法上の権利として持つことになる。バイデンは、なぜ早々にその権利を放棄するかのごとき発言をしたのであろう。