2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月1日

 シェイクは、バイデンが、ロシアとの直接対立の可能性を打ち消したのは、核大国である米露の軍事衝突リスクを避けたかったからであろうと指摘する。しかし、それではプーチンの交渉立場を極めて有利にし、その要求を断念させることが難しくなることは明らかであった。

核保有国への対応の前例に

 2014年のクリミア併合や15年のドンバス地域への間接侵略に対する米国および欧州諸国の制裁措置が甘く、その後のドイツのノルド・ストリームへの対応、更にはトランプのプーチン礼賛がプーチンを増長させたことは間違いないであろう。ウクライナで譲歩すれば、バルト3国が次の標的となることは目に見えている。

 そして、シェイクは、アフガニスタン撤退によりさらに弱まった米国の抑止力を回復するためにも、より強硬な対応が必要だと主張する。

 しかし、バイデン政権も、その後、周辺国に米軍を派遣し、バイデン自身が2月12日、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話で、侵攻があればロシアはすぐにも「過酷な代償」を支払うことになるだろうと述べ、また2月13日、サリバン安保担当補佐官も、同盟国などと団結し、「断固と対応する準備もできている」と述べ、その表現は厳しくなってきている。種々の準備が進んでいることも背景にあるのであろうが、いずれにせよ、それは経済・金融上の制裁と見られている。

 他方、ロシアでは、2月15日、プーチンがショイグ国防相やラブロフ外相に対して今後の対応につき意見を求め、両大臣が回答する場面が国営放送で中継された。ラブロフは外交的解決の可能性はあるとして交渉継続を進言し、如何にも芝居がかっている印象を受けた。

 なお、ウクライナ情勢が今後どう推移しようとも、バイデンが、ロシアの軍事侵攻に対しても対策は経済制裁だけで軍事的介入は行わないとの方針を表明したことは、今後、核兵器国による同様の問題に関する米国の対応についての先例と見られてしまうことが懸念される。

   
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