2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月21日

 1月27日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、プーチンはバイデンのアジア政策を破壊させかねないと書いている。

Baris-Ozer / iStock / Getty Images Plus

 ロウギンは、①ウクライナ問題は、バイデンを含め米の外交・安保チームのほとんどの時間とエネルギーを取っており、アジアへの外交・安保への注意は手薄になっている、②プーチンがウクライナ問題で結果を出せば米国のアジアでの信頼が失墜し、他方、米国がプーチンの侵略を阻止すべくウクライナ問題に注力すれば米国の対アジア関心が減少するという問題が起きる、③ウクライナ問題はバイデンのアジア政策を破壊させ兼ねない旨指摘する。意味ある議論である。

 米国の対処能力上、ウクライナとアジアは基本的にトレード・オフの関係にある。二正面作戦は容易でない。ロウギンが言う様に、この難しい状況であっても、米国はアジア太平洋に最大限の注意を払うことが必要である。中国などに今の隙を悪用されないようにすることが肝要である。

 1960年代後半頃には、米国は世界で同時に2ないし1.5の戦争遂行能力を保持すべきといった議論がしきりに行われた。米国の世界関与の制約要因には、このような軍事力に加えて、ロウギンがここで指摘するような外交・安保の人的リソースの要因も働いてくる。

 恐らく今の状況を与件とすれば、ロシア(ウクライナ)と中国という二つの国と同時に主要な紛争を継続的に抱えることは至難である。今の米外交・安保チームへの負担は想像に難くない。

 今のようなディストラクション(注意集中を妨げる邪魔)に対処するためには、常に危機に対応できる力(軍事力、政府の政策マネジメント能力)を維持しておくことが先ず重要である。更にトレード・オフの危機に陥らないように、あらゆるリスクを予見して政策的に手を打っておくことが重要となる。

 その意味で米国は例えば環太平洋パートナーシップ(TPP)加盟を含め貿易戦略を早く確立すべきだ。またロシアと中国の連携を阻む政策も探り続けることが重要である。


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