2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年4月8日

 著書『歴史の終わり』で有名な米国の政治学者フランシス・フクヤマが、フィナンシャル・タイムズ紙に3月4日付で‘Putin’s war on the liberal order’と題する論説を寄稿し、民主的価値はプーチンのウクライナ侵略の前から脅威に晒されていた、しかし今や1989年の精神を呼び覚ますべきだ、と述べている。

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 フクヤマの主張は、

①自由主義の秩序は、プーチンの前からポピュリズムや独裁者など社会の左右から攻撃を受けてきた。
②ウクライナの危機は自由な世界秩序を当然視できないことを明確にした、闘わねば消滅する。
③プーチンが負けても自由主義の「仕事」は終わらない、その後に中国やイラン、ベネズエラ、キューバ等が控えている。
④自由主義の精神はウクライナで生きている、その他の国の我々も徐々に覚醒している。

ということである。フクヤマの自由主義への強い信念と中国など反自由主義国に対する強い危機感が印象的である。

 ウクライナ戦争につき「これはロシアの戦争ではない。プーチンの戦争だ」という見方がある。確かにその側面は強いが、ロシアのシステム、社会の問題も大きい。ロシアが民主主義であったならば、今回の侵略のようなことは起こらなかったであろう。

 ロシア国内の民主化の動きが注目される。3月14日夜には、国営テレビの放送中に同テレビ局関係者が「戦争反対」の看板を掲げてニュース・キャスターの後ろに立った。冷戦終了後の民主化、自由主義の芽は、いくらプーチンが摘もうとしても確実に育っているのだろう。


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