2022年11月27日(日)

バイデンのアメリカ

2022年4月20日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 さらに、米連邦議事堂乱入・占拠事件にからんだトランプ弾劾審議では、民主党議員らとともに率先して支持投票したほか、現在もなお、同事件の真相解明に乗り出している下院特別調査委員会幹事の一人として、トランプ氏告発に意欲を燃やしている。

 こうしたことから、トランプ氏は大統領離任前からその存在を危険視し、ツイッターなどを通じ、ことあるごとに「名ばかりの共和党員Republican in name only=Rino」だとして激しいチェイニー議員批判を繰り返したほか、自らの息のかかったマッカーシー院内総務に命じ、同女史を共和党下院の要職から引きずり下ろす騒ぎにまでなっている。

 その後、共和党は、二人のたんなる〝私怨〟の関係から、レーガン、ブッシュ親子歴代大統領当時の伝統的共和党支持派とトランプ氏に代表される超保守主義派との対立へと発展してきた。とくにチェイニー女史の場合、これまで集まった政治資金の大半が、地元ワイオミング州以外の全米各州からの支援によるものと伝えられており、それだけ同州予備選が全国的関心事となっていることを示している。

各州で行われる非難合戦

 共和党本流とトランプ派のいがみ合いは最近になって、他州にも広がりつつある。去る14日、開催されたミシガン州メイコム郡の共和党大会がいい例だ。ニューヨーク・タイムズ紙がその模様を詳しく伝えている。

 それによると、500人以上の党員で埋め尽くした会場では、熱心なトランプ支持者で知られる同党郡委員長がまず登壇、冒頭からアンチ・トランプ派の動きをけん制する開会演説を始めたところ、たちまちヤジ、怒号が飛び交い、場内は、「Trump」のネーム入り帽子やTシャツ姿のトランプ支持派と、カーデガン、スーツを着込んだ党主流派が真っ向から対立する緊迫した雰囲気に包まれた。

 今回の同党大会では、トランプ氏が敗退した20年大統領選挙結果について「不正、違反により無効」を主張し続けてきた郡委員長、財政委員長ら党幹部解任動議の採否が最大のハイライトだったが、結局、両派間激論の末、州最高裁、連邦最高裁の判断通り、大統領選の結果を率直に受け入れるべきだとする主流派の意見が僅差で過半数を占め、党幹部解任処分が決議された。

 しかし、ニューヨーク・タイムズ紙によると、選挙結果をいまだに否認し続けるトランプ派と、議事堂乱入・占拠事件におけるトランプ氏の責任追及も辞さない主流派間の同様の非難合戦は、ミシガン州の他の郡そして、20年大統領選で接戦を繰り広げたウィスコンシン、アリゾナなど他州の共和党委員会にまで広がりつつあるという。このため、もし、トランプ氏が2年後の次期大統領選に再出馬することになった場合、同党全国大会における大統領候補指名争いの場でも、党内亀裂が拡大し大混乱となる可能性も否定できない。

ウクライナ対応でも崩れつつあるトランプ支持

 こうした中、退任後も、いぜん盤石といわれてきたトランプ氏の支持基盤にも最近、亀裂と陰りが見え始めている。

 有力シンクタンク「ブルッキングズ研究所」のニュースレターによると、①中核となる過激集団が縮小しつつある、②予備選に向けてトランプ氏が個人的に支持表明した候補の多くが各州で苦戦を強いられている、③主流派に属する大物政治家、財界人、政治コンサルトらが「トランプ再出馬」への批判を強めている――などがその要因として挙げられる。

 例えば、NBCテレビが20年大統領選投票日前に実施した世論調査では、「共和党」ではなく「トランプ個人」に対する共和党員の支持率が54%と過半数だったのに対し、今年1月末に行われた同じ調査では、「共和党支持」と「トランプ支持」がともに46%と拮抗していることが明らかになった。共和党員の間で「トランプ個人崇拝者」が減り始めた兆候と受け止められている。

新着記事

»もっと見る