2022年10月2日(日)

バイデンのアメリカ

2022年4月20日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ大統領に在任当時から反旗を翻してきた名うての女性下院議員が、共和党予備選に向け、記録的な政治資金を集めていることが明らかになった。トランプ熱烈支持候補との女性同士の一騎打ちに全米の関心が高まっている。

米連邦議事堂乱入・占拠事件にからんだトランプ弾劾審議で支持にまわるなど、トランプ氏に反旗を翻し続けているリズ・チェイニー下院議員(AP/アフロ)

 米政治メディア「Politico」は去る4月11日、スクープ記事として、再選目指すリズ・チェイニー下院議員(ワイオミング州)が共和党予備選に向けて記録的政治資金を集めていると報じた。

 それによると、8月16日に行われる同州予備選をめぐり、チェイニー議員は当初、トランプ氏のお墨付きを得て立候補した女性弁護士のハリエット・ヘイグマン候補の挑戦を受け、苦戦が伝えられたが、その後、共和党正統派の市民団体や経済界などの間で支持を広げ、今年第1四半期だけで294万ドル、過去の分含め1000万ドルを突破、投票日に向けての手持ち資金もすでに680万ドルに達しているという。

 昨年第1四半期の150万ドル、第2四半期190万ドル、第3四半期170万ドル、第4四半期200万ドルと比べても、2倍近い勢いとなっており、歴史的にも同州における連邦議員予備選としては空前規模とされる。

 一方のヘイグマン候補の政治資金は、その半額以下にとどまっている。

共和党の保守本流とトランプ派の正面衝突

 しかし、今回、ワイオミング州共和党予備選が全米で注目されるに至った最大の理由は、両候補をめぐり、レーガン、ブッシュ両政権の流れをくむ保守本流と、〝異端〟的存在のトランプ支持派が真っ向から対立、状況次第では2024年大統領選の共和党候補指名争いにも大きな影響を及ぼすとみられているからにほかならない。

 実際に、保守本流陣営では、G.W.ブッシュ元大統領が昨年9月、テキサス州ダラスで開かれたチェイニー議員支援集会に姿を見せ、応援演説を行ったほか、今年に入ってからも再選のための個人献金を行ったことが明らかにされた。同じく大統領在任当時から、トランプ氏とぎくしゃくした関係にあったミッチ・マコーネル同党上院院内総務、ミット・ロムニー上院議員ら有力者たちも、チェイニー議員再選めざし、政治献金や支持演説を行ってきている。

 これに対し、昨年1月6日のトランプ支持派過激集団による連邦議事堂乱入・占拠事件関連の弾劾審議で大統領擁護に回ったケブン・マッカーシー下院院内総務らトランプ支持派グループは、ヘイグマン候補を支持しており、党内対立はエスカレートしつつある。

 元々、チェイニー女史は、ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の長女として弁護士、国務省上級スタッフなどを務めた後、16年に初当選以来、下院において父親譲りのタカ派的発言で頭角を現し、昨年まで、同党下院でナンバー・スリーの要職にあった。この間、トランプ大統領がブッシュ政権当時の伝統的共和党路線からはみ出した極端な孤立主義的外交政策や人種差別的な移民政策を打ち出し始めたことに反発を強め、議会では党内きっての〝アンチ・トランプ〟論客として脚光を浴び始めた。

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