2024年5月6日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月19日

 米国は、尖閣周辺に、非軍事的な法執行機関の艦艇、すなわち、コーストガードの監視船を展開させるべきである。そうすることで、「米国は事態を悪化させようとしている」という中国によるプロパガンダの可能性をできるだけ封じつつ、米国による公式の支持を示すことができよう。

 米国は、プレゼンスを強化しなければならない。中国がより威嚇的姿勢をとると決めたならば、米国が必要に応じてそれに対応できるように、優位を維持する用意があると、明確にしなければならない。そのために、米太平洋軍は、沖縄だけでなく、日本中の基地に、追加的な兵力展開を考えるべきである。これらは、海軍、空軍だけでなく、中国の弾道ミサイルに対抗するために、ミサイル防衛部隊も含むべきである。

 中国のRIMPAC(環太平洋合同演習)への参加をキャンセルすべきである。パネッタと太平洋軍による、中国へのRIMPAC招待は、思慮に欠けていた。中国が米国の重要な同盟国である日本に瀬戸際外交を繰り広げているときに、中国の参加をキャンセルすることは、中国の行為は相応の結果を伴うという明確なシグナルを発する機会を与えてくれる。

 尖閣周辺の空を監視するために、米国が追加的に兵力を展開することは、米国の日本支持を示す手段の一つだが、それは、米中の軍事衝突の危険性を高めることにもなる。

 そうであっても、それをいったん始めて途中で止めるということは、愚行である。同盟国を支持しないことよりも悪いのは、中国の決意に対して米国が後退していると見られることであろう。したがって、米国は、事態の安定化を図る一方で、地域へのコミットメントと同盟国としての確固たる意志を明らかにしなければならない、と論じています。

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 このチェンの意見は、現在までに現れた米国の意見の中で、最も強硬なものです。

 米軍機による空中哨戒の強化は、中国の行動に対して警告を与える効果があるでしょう。RIMPACへの招待拒否は、強烈な外交的ジェスチャーとなるでしょう。米中軍事交流は、その実効性はともかく、米国の中国関与政策の一つの柱となって来ているので、その中断は、大きな政治的インパクトがあるはずです。従来、交流の中断を外交的手段に使って来たのは、中国のほうです。

 ただ、それだけに、対中関与を標榜しているケリー国務長官などオバマ政権の新陣容が受け入れる可能性が極めて小さい提案であると言えます。

 にもかかわらず、このような保守的な論を堂々と開陳することのできる、米国の知的社会の幅の広さには讃嘆を禁じ得ません。そして、これは、もとより日本にとっては頼もしい議論です。

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