時点を変えれば円高になっていないという意見もあるかもしれないので、図2で1990年を基準としたグラフも示すが、四半世紀も円高が続き、かつ円の価値が日本ほど変動している国はどこにもない。
次に実質実効レートを見ると、図3のようになる。名目ほど円高になっていないが、それは日本の物価が下落したからである。1990年代の末まで物価が下がっても円高だったが、その後2013年以降の大胆な金融緩和後の名目レートの安定とともに実質レートも安定した。
円高というデフレ圧力が払拭されたのである。つまりは、現状はうまくいっているのである。
エネルギー価格高騰は円高で対応できない
円安が止まらないと困る、あるいは円安だから原油価格が上昇してインフレになるという議論があるが、円安になれば輸出が増えて外貨収入が増え、円安は止まる。現状では、コロナで海外観光客が来られず、サプライチェーンが途切れて部品が入らず生産できない。したがって円安でも外貨収入が増えないが、それはコロナが収まれば解決できる。
ウクライナ戦争で経済が正常に機能しない問題もあるが、それは仕方がないことだ。世界経済が苦しんでいるときに、日本だけ円高にすればさらにまずいことになる。これはリーマン・ショック後の円高で経験したことだ。
エネルギー価格が高騰しているが、エネルギー価格は2倍にも3倍にもなるものだ。これを円高で抑えようとすれば、対ドルレートは120円が40円にならなければならない。つまり、エネルギー価格の高騰を円高で対応するというのはナンセンスということだ。エネルギー価格は国内物価に波及させ、それで困窮に陥る人々は、別途の所得補填によって助けるのが合理的な政策だ。