ロシアのウクライナ侵攻、米国の利上げなどにより7年ぶりの円安が進行している。いま、日本との貿易量などをもとにさまざまな国の通貨の価値を計算し、物価変動も加味して調整した実質実効為替レートの推移をみると、足元では66.54であり、ピーク時の1995年4月の150.84から円の価値は半分未満に低下している。現在の円の実力は固定相場制だった72年当時の水準にまで低下している。
こうした円の実力の急低下(円安)の進行に加えて、ガソリンや食料品の値上げが相まって、家計負担の増加による消費の低迷と景気の落ち込みが懸念されている。日本は輸出大国であり、円安こそが最高のカンフル剤であるとの主張も相変わらず根強いものの、今般の円安においては、日本経済へのマイナスの影響を指摘する声も多く聞かれる。
円高・円安とは
円安の家計への影響とマクロ経済への影響は分けて考える必要があるが、そもそも円高・円安とはなんだろうか。周知の事実だが、改めておさらいしよう。
円高とは、1円と交換できる他国通貨の単位数が多い状態、逆に、円安とは、1円と交換できる他国通貨の単位数が相対的に少なくなる状態を指す。具体的には、1ドル=100円の場合、1万円札をドルに両替すると、アメリカドルを1万円÷100=100ドル入手できる。しかし、もし1ドル=50円になったとすると、1万円÷50=200ドルとなり、1ドル=100円のときと比べて、同じ1万円で200-100=100ドル余分に入手できる。
つまり、1ドル=100円が50円になったとすると、1円と交換できるアメリカドルが増えているので円高といえる。逆に、1ドル=200円になった場合を考えると、1万円÷200=50ドルなので、同じ1万円で入手できるドルは100-50=50ドル減ってしまう。この場合は、1円と交換できるアメリカドルが減っているので円安となる。
円高や円安は企業の輸出や輸入に影響を与える。いま、日本で1万円の商品を米国に輸出している企業を考えると、1ドル=100円の場合は100ドルで現地販売することになる。円高によって1ドル=50円になったとすると、同じ商品の現地価格は200ドルに上昇してしまう。このままでは現地販売はままならないので日本からの輸出は手控えられるだろう。あるいは現地価格を値下げして販売すると値下げした分だけ1個当たりの日本円で見た売り上げが減少することになる。
逆に円安によって1ドル=200円になったとすると、同じ商品の現地価格は50ドルに値下がりするので競合商品よりも有利になる。このとき、日本からの輸出は増えるはずだ。あるいは、現地価格を60ドルに値上げしたとしても円安前より40ドルも安いので、日本商品の人気は衰えず、1個当たりの日本円で見たときの売り上げは2000円増えることになる。