日本のロシア化を避ける3つの処方箋
日本の通貨安がインフレをもたらし、財政を危機に追いやるロシア化に陥るのを防ぐには、以下の3つの処方箋が適切であろう。
(1) リフレ政策の放棄と着実な財政再建の実行
しのびよるインフレを撃退するには、日銀による金融引き締めが不可避だが、現在は巨額な財政赤字がそれを困難にしている。日銀がフリーハンドで効果的にインフレ退治を行うには、すでにデフレではなくインフレであるという現実を直視し、リフレ政策の放棄が必要なことと、国債に依存しない政府財政の実現が必要だ。
(2)再生可能エネルギー貯蔵技術への投資
今般の輸入インフレの元凶は資源価格の高騰である。これは現在実質上、全国の原子力発電所が機能しておらず、自然エネルギーによる電力の安定供給が実現していないことに原因がある。
化石燃料への依存を軽減しつつ、エネルギー需要のピークとボトムのバランスを調整していくには、蓄電池や揚水発電など再生可能エネルギーを貯蔵する技術開発への投資が不可欠だろう。ただ、筆者はエネルギーの専門家ではなく、現状の技術でそれらの実現が困難であることは承知しているが、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの自然エネルギーへの転換を可能にする電力貯蔵技術での技術革新は国内でのエネルギー確保を容易にし、新技術を海外に売ることで、国富の海外流出を減らすことにつながる。
(3)円安差益還元
かつて円高が進行した際、小売業では円高差益還元セールが実施されていたが、寡聞にして円安差益還元なるワードを聞いたことがない。有体に言えば、輸出製造業は、輸入企業や多くの一般国民の犠牲の上に利益を上げているという自覚が足りていない。円安でメリットを受ける企業は、そのメリットを賃上げや、系列の中小・零細企業に利益を確実に還元する仕組みを制度化する必要がある。
このように、円安や輸入インフレのデメリットを最小化し、日本経済の足腰を強くする政策の実行は、同時に、低賃金や安定しない雇用に喘ぐ若者を救い、財政や社会保障制度の持続可能性をも高めるだろう。