2024年12月9日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2021年12月14日

 円安が日本を貧しくするという議論が流行っている(例えば、「意外に根深い「悪い円安」 年末株高シナリオ揺らす」日本経済新聞2021年10月17日)。確かに、自国通貨が安くなれば海外のものを高く買わないといけないから、この点では得をする。しかし、円高になれば、日本のものを高く売らなければならないというハンディを負わされる。

(metamorworks/gettyimages)

 高く売れるように頑張れば良いという人もいる。確かに、時刻が狂う機械式時計を何千万円かで売っている会社があるのだから、高く売ることは重要だ。しかし、どうしたら高く売れるかが分からなければ意味がない。

 実際に、自国通貨が高い国と低い国とでどちらの実質所得が上がったかを見てみよう。

実質購買力平価と為替レートでの1人当たりGDP

 図1は、本欄「なぜ、日本は韓国よりも貧しくなったのか」に示したものと同じだが、主要国の実質購買力平価での1人当たり国内総生産(GDP)の推移を見たものである。実質購買力平価での1人当たりGDPは為替レートでの1人当たりGDPよりも、国民の生活水準をよりよく表す指標である。

 図に見るように、日本のGDPはわずかな増加にとどまり、日本より豊かな国には差を拡大され、豊かでなかった国には追い抜かれている(以下の記述において20年はコロナショックの特殊な事情があるとして、19年を最新時点と考える)。例えば、日本は1991年に米国を1として0.852の水準にまで追い付いたのに、その後、差を拡大され、2019年には0.670にまで低下した。

 一方、1980年には日本より下位にあった香港、台湾、韓国は2019年には、それぞれ0.953、0.821、0.687という水準に上昇した。米国に順調に追い付いていったわけであるから、当然に、日本より豊かになった。1980年で日本とほぼ同じだったシンガポールは、2019年には1.577とアメリカよりも豊かになった。


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