過去の円高に良いことはあったのか
図2を見ながら思い出してみよう。1980年代後半、90年代央、リーマンショック時には円高になった。それで日本は豊かになっただろうか。
1980年代後半の円高では、円高不況と言われながらも、まもなくバブルの好況がやって来て円高不況は忘れられてしまった。円高に対応して、日本企業は海外進出を加速させた。しかし、海外でモノを作るためには日本の製造機械を持っていかなければならない。また、海外では高度な部品を作れないので、日本から輸出することになった。
最終消費財を輸出していた日本は、資本財と部品・中間財を輸出する国へと変貌を遂げた。外から見れば外国製だが、「(最終製品の中に)ニッポン(製品が)入ってる」という状態がしばらく続いた。資本財や部品の方が利幅を取れたので、日本は有利になったと言えたかもしれない。しかし、90年代央ではそのようなことは起きなかった。
リーマンショック時の円高では、部品製造でも大打撃を受け、日本は半導体も液晶も太陽光電池もほとんどを失った。高く売れる産業も、高度ハイテク産業も、先進的な金融業も生まれず、製造業に代わる産業は育たなかった。
日本が円高で苦しんでいるとき、台湾も韓国も自国通貨高を経験せず、成長率を維持して日本を抜き去った。
やはり、円安が悪くて円高が良いとは言えないのではないか。