為替レートでの1人当たりGDPを見ると、図2のようになる。日本は1995年に米国を1として1.542と米国を上回ったが、その後、大きく変動しながら停滞し、2019年には0.625となった。それに対し、香港、韓国、シンガポール、台湾は、19年にそれぞれ0.742、0.491、1.009、0.399となった。香港、シンガポールは為替レートで見ても日本より豊かになった。韓国、台湾は為替レートで見れば日本より所得が低いが、すでに見たように、生活水準を比較する上でより意味のある1人当たり実質購買力平価GDPでは日本の上にある。
割安な為替レートは成長をもたらすのか
以上述べたことは、香港、韓国、シンガポール、台湾の為替レートが割安だということである。このことは図1と図2をよく見比べれば分かるのだが、分かりにくいので、為替レートでの1人当たりGDP/実質購買力平価での1人当たりGDP比率の推移を見たのが図3である。
為替レートでの1人当たりGDP/実質購買力平価での1人当たりGDPが1より大きいのは為替レートが割高であることを示している。日本が1より大きいのに対して、香港、韓国、シンガポール、台湾は1以下である。すなわち、為替レートが割安な香港、韓国、シンガポール、台湾はより高い成長を示し、割高な日本は停滞したということである。ここから考えると、為替レートが低い方が、成長率が高くなるのではないか。
この結論に対し、サンプルが5つしかないではないかという反論があるかもしれない。しかし、この5つの国・地域はいずれもアジアの工業国であり、特に、日韓台の3つの国・地域は同じような経済構造を持っていて世界市場でライバルでもある。そう考えると、サンプルが5つでもあてになるのではないかと思う。経験的には、割安の為替レートが長期的な成長のためには有利だったのではないか。