2024年12月7日(土)

パラアスリート~越えてきた壁の数だけ強くなれた

2013年3月18日

クロスカントリースキーと出合う

 兄の影響でスポーツが好きだった鹿沼は、定期的に東京都障害者総合スポーツセンターに通い、走ったりトレーニングジムで汗をかいてリフレッシュしていた。そこで障害者クロスカントリースキーの荒井秀樹監督に紹介されたことがきっかけで、2006年にクロスカントリースキーを始めた。

 「なぜクロスカントリースキーを? もともとスキーは得意だったの?」という質問に、

 「いいえ、ぜんぜん! 私は東京生まれなので雪がすごく珍しくて、やってみようかな~と。雪のない山は木の根があったり、石ころがあって私達には怖いところなんですけど、雪があればその上を滑るので何の障害もありません。雪山を、風を切って走るところが魅力的でハマリました!」

 鹿沼のスキー経験は中学、高校時代に移動教室で滑ったことがあっただけだ。当時はガイドもなく、一人で深く考えもしないで、ボーゲンでこうやって滑ればいいんだ~と楽しんでいたようだ。

 障害者のクロスカントリースキーの特徴は、健常者と視覚障害者がペアになり、健常者が5メートルくらい前を走ってガイドすることにある。腰につけたスピーカーから聞こえる「ハイ、ハイ、ハイ」という懸け声や、カーブなら「右カーブ」「左カーブ」、下りなら「ここから下り始める」という声をたどりながらスピードやタイムを競う競技である。

 「紐では結ばれていないのですが、前の方の声をたどってついていくんです。滑りは健常者と同じですが、違いは前にガイドがいるということです」

世界を目指すも準備不足のバンクーバー

 2006年に始めたころは、合宿があれば参加するくらいで競技者としての意識はなかった。しかし、2008年に「バンクーバーに出られるかもしれない」と可能性を聞かされてからは本格的に取り組んだ。ただし、そのバンクーバーパラリンピックまでは2年しかなかった。

 「2010年、無事にバンクーバーへの出場権を獲得して4種目に出場しました。バイアスロン・パシュート(走って5回射撃してまた走る。1キロ×3周)では7位でした。ほぼぶっつけ本番みたいな(笑)。滑るのはクロスカントリーと同じですが、視覚障害者はビームライフルといって、的の真ん中に近づくにつれて音が高くなるものを使います。その音の高さを聞き分けて狙って打つのですが、あれは、私が目標にしていたクラシカル走法の緊張をほぐすために出てみなと監督に言われて出場した種目でした(笑)。」

 バンクーバーパラリンピック出場4種目の結果は、

 バイアスロン・パシュート7位 / 5kmクラシカル走法8位 / クラシカル・スプリント7位 / クロスカントリースキー女子リレー(2.5km×3人)5位。


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