「自分が意見を言える場所」を手に入れる
『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』は、「えりぴよ」とそのオタク仲間たちの会話をメインとして進む。常にともに現場(ライブ会場などを指す)に入る「くまさ」は、小太りの中年男性であり、オタク仲間たちは性別も年齢もバラバラだ。
「推し」という共通言語を持つことで、推し活をしなければ出会うことがなかった人たちと固い絆で結ばれる。これも人々が「推し活」にハマるもう一つの理由だ。家庭、学校、職場などの決まりきった「社会」から飛び出して、自由にコミュニケーションをとること。これも人々が「推し活」を通して求めていることだろう。SNSを通して推しのすばらしさを語り、同じ趣味の仲間とつながりと語り合うこと。これは「自分が意見を言える場所」を手に入れるということであり、社会に参画している実感を生み出す。
人々が「推し活」を通して手に入れたいと願っていることを考えると、「推し活」という文化の隆盛は必然であったといえるし、また今後もさらに拡大、一般化していくといえよう。こうした時代の趨勢を踏まえれば、今後の若者に対して提供していくべきサービスも自然と見えてくるはずだ。
筆者が応援している会社の一つにも、この「推し活」を事業ドメインとしている「Oshicoco」という企業がある。「推し活応援メディア」をインスタグラムで開設し、開始半年で数万人のフォロワーを獲得。平均の5倍のエンゲージメントを叩き出すまでに成長しており、この領域が凄い勢いで市場拡大していることが見て取れる。同社では、十数年間推し活に励む23歳の女性社長が、推し活文化を広め、人々を「スキ」の力でエンパワーメントするというヴィジョンを掲げて邁進している。推し活についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ同社のメディアをご覧になると良いだろう。