また、ドゥテルテ家とマルコス家の関係が強いことなどから縁故主義が懸念される。縁故主義は、良い統治を蝕み社会不安を引き起こす。フィリピンの今後の内政に注目していく必要があるのは間違いない。
対中、対米関係の姿勢も未知数
それ以上に、インド太平洋の主要な近隣国であるフィリピンの外交政策は、日本にとり関心事項である。しかし、外交については、ボンボンは大統領選でほとんど何も言っていないに等しい。ただし、過去の発言を見ると、反米で中国寄りのドゥテルテと異なり、米中対立の中で米国一辺倒も対中傾斜も求めない、と言っている。また、米比相互防衛条約を重視する発言もしている。
どこまで深く考えられた発言か不明ではあるが、これらは、フィリピンの伝統的な外交政策に則ったものであると言えよう。自国が提訴した2016年の南シナ海問題をめぐる国際裁判の判決を対立相手の中国と一緒になって4年間も認めなかったドゥテルテとは異なるといってよいと思われる。
そして、フィリピン人の対中観は厳しく米国への信頼感は非常に高いことも見逃すべきではないだろう。中国は、南シナ海でフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置する岩礁の周辺等に海上民兵を乗せていると疑われる漁船団を集結させるなど、フィリピンの海洋権益を侵害しており、こうした世論は強まることはあっても弱まることはないのではないか。
ボンボン政権は、中国を強く刺激することは避けつつも、ドゥテルテほど反米になることはないだろうというのが大方の見方である。