設備も材料も中国頼み
世界の陸上風力発電設備の50%以上は、世界一の市場を持つ中国メーカーにより供給されている。洋上風力発電設備については、ヴェスタス、シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーの欧州メーカーが市場をリードしていたが、大きな導入量を背景に中国メーカーが急速にシェアを伸ばしている。21年のシェアでは中国メーカーが世界シェアの4分の3を占めた(図-2)。
中国メーカーは、欧州市場にも進出を始めている。4月に発表されたイタリア初の洋上風力設備のメーカーは中国明陽風電集団に決まった。クロアチアに導入された設備は上海電気が納入する。
日本では、洋上風力設備部品の60%を国産化する計画だ。しかし、中国、欧州メーカーが世界市場を席捲する中で競争力を持ち参入できるのだろうか。
仮に、日本メーカーが競争力を持つとしても、さらなる問題に直面する。部品の多くは中国から供給される。エネルギー自給率を増やし、脱ロシアを実現するための洋上風力導入が新たな中国依存を作り出すのだ(「エネルギーの脱ロシアの先にある中国依存というリスク 」)。
例えば、重要部品のネオジム磁石の原料の90%は中国で生産されている。磁石の製造は中国シェア92%で日本も7%の世界シェアを持つが、日本では原料の生産はない。社会体制が異なる国、独裁国家にエネルギー、重要な原料を依存する危険性は、ロシアが示してくれた。
ECは、レアメタルの域内生産、リサイクルにも踏み切るが、日本の市場はそれほど大きくはない。EUと同じことはできないだろう。さらに、風力、太陽光発電設備の導入には使用する資源量の問題がある。
大量の資源を必要とする再エネ設備
米国エネルギー省は、発電設備別に必要な資材・資源量のデータを発表している。表が示すように、再エネ設備には大量の資材が必要とされる。資材製造と輸送の二酸化炭素排出量はどれほどだろうか。さらに、輸入される資材も考慮のうえ自給率を考える必要もありそうだ。
日本の洋上風力の最大の問題は、年間の利用率が欧州との比較で劣ることだ。要は、発電量が少なくなるのだ。しかも、日本では夏場に凪が多く、夏の発電量が低下するという現象がある。電力需要が高い時に発電量が落ちるので、その分バックアップ設備が必要だ。
欧州北海の風力発電設備の利用率は、最も高い設備では60%を超える。40~50%が標準的だ。日本の洋上風力の利用率は30%から35%程度と想定されている。要は、欧州の3分の2程度の発電量になる。