2022年8月10日(水)

World Energy Watch

2022年5月23日

»著者プロフィール
著者
閉じる

山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 市場が大きい欧州での設備投資額は日本よりも安くなり、浮体式が多い日本では工事費が高くなる可能性もあるが、投資額を同じと想定しても、日本の電気料金は洋上風力を進める欧州諸国の1.5倍になる。産業も国民も高いエネルギー価格を負担しなければいけない。

 日本で産業が興る可能性もほとんどない、大量の資材を必要とする、洋上風力を進めれば、中国メーカーを成長させ、電気料金を引き上げた太陽光発電以上の悪夢が待っていそうだ。

自給率向上とエネルギー価格抑制を

 ロシアのウクライナ侵攻はEU市民の考えを変えた。今年4月ドイツ公共放送網が行った世論調査では、脱原発の中止を支持する意見が53%と過半を超えた。脱原発にしがみつく意見は38%だった。ドイツ政府は、事業者が脱原発に向け閉鎖の準備を進めていることなどを理由に化石燃料の購入を増やす脱原発は変えないようだ。

 フィンランドでは、原発を強く支持が34%、どちらかと言えば支持が26%に達した。強く反対3%、どちらか言えば反対8%と賛否の差は大きく開いた。脱ロシアと脱化石燃料を同時に進める最も良い方法は、原子力発電と多くのEU市民は思い始めた。

 日本は欧州諸国よりも選択肢の幅は少ないことに思いをはせる必要がある。エネルギー価格の上昇は産業の競争力と国民生活に大きなダメージを与える。洋上風力に代わる計画を打ち出すべき時期に来ている。 

編集部からのお知らせ:本連載でも鋭く日本のエネルギー政策に切り込んでいる山本隆三氏の著書が、6月20日に弊社より刊行予定です。ロシアのウクライナ侵攻に関わるエネルギー問題など、わかりやすく解説しています。詳細はこちら
 
 
 『Wedge』2022年6月号で「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」を特集しております。
 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。

  
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る