2022年8月10日(水)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年6月2日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)、『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

 このアプローチは売り手が賛同しない場合には敵対的買収にまでエスカレートすることもあるが、Opportunityハンターとも言うべき投資家サイドの積極姿勢は、日本企業には見られないものである。

 そのOpportunityハンティングの積極姿勢は、スタートアップ企業に対してこそ大きく、非常に多くの企業やベンチャーキャピタルが、次のGAFAM(Google〈現Alphabet〉、Amazon、Facebook〈現Meta〉、Apple、Microsoftの頭文字で、Big Tech5社とも言われる。いずれもスタートアップ企業として勃興し、2021年8月には、この5社の時価総額の合計が日本の全ての上場会社の時価総額の合計〈当時770兆円〉を上回り話題となった)を探し当てようと躍起になっている。そのような厚い投資家層を背景に、起業に対する熱も当然高いものになっている。

 米国の大学において優秀な学生はコンサルや投資銀行を目指し、さらに一握りの最優秀の者は起業するといわれている。今までにない新しい価値を世の中に生み出し、経済的な成功も手に入れようという野心家達だ。つまり投資家と起業する側には、相互のOpportunityの追求意識が存在するわけで、米国においては、GAFAMクラスの企業が必然的に再生産される土壌ができていると言えるのである。

 娘に関して言えば、Opportunityを追求するオーナーの目に止まり、成長のためのベンチャー出資を受けた形だ。GAFAMが大化けしたように、娘も大いに成長して、投資家であるオーナーにしっかりリターンを返してもらいたいものである。

必要な「Opportunity」と認識する力

 さて今リターンという言葉を使ったが、これは前回のコラム『高校生への金融教育 儲け話だけの授業ならいらない』の重要なキーワードであった。前回は、過去30年の日経平均と米国ダウの株価推移を比較し、ダウが30年で約12倍も成長したのに対し、日経はほとんど成長しなかったことを示した。つまり株というリスク資産に投資したのに、日本においては得られたリターンがリスクに全く見合わないものであったということだ。

 株式投資でリターンを得るためには、対象企業が成長しなくてはならない。過去30年を振り返ると、IT技術が大いに進歩して日常生活やビジネスの仕様が大きく変化した。また地政学上のリスクが高まり、リーマン・ショックやコロナショックのような大きな経済ショックも発生して事業環境のボラティリティー(変動性)が増大した。つまり日常に対して、常に変化の波が訪れていたことになる。

 変化とはリスクであるが、Opportunityの源泉でもある。変化をリスクとして行動を制限した者と、変化の中に今の日常を大きく変えるOpportunityを見出して積極投資をした者の差。私には、日経とダウのパフォーマンスの差がこのように見えてしまうのだが、皆さんはいかがであろうか。

 リスクに対する姿勢に加えて、自分の優位性を盲信している場合もOpportunityを見逃す危険性がある。自分がコンビニの店長であるとしよう。外国人のアルバイトから、彼らの経験に基づいたオペレーションの改善提言をもらったら、果たしてどうするであろうか。

 コンビニは日本発祥のビジネスだ。改良に改良を重ね今日に至っており、オペレーションは完成されている。本社が制定した完璧なマニュアルも存在する。外国人の知見から学ぶものなどないと考えれば、アルバイトの行為に対して謝意は示しつつも黙殺するかもしれない。自らの優位性を疑わない場合、事象を別の角度から見る機会があっても敢えてそれをせず、結果としてOpportunityをOpportunityとして認識できないことにつながってしまうだろう。

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