(3月11日水府学院にて)
「初瀬さんと同じように僕も強くなりたくて柔道を始めた……。好成績も収めた……、しかし怪我が原因で挫折し柔道を離れた。その後、柔道で育んだ力を悪い方向に使ってしまった。ここを出たらもう一度柔道を始め、初瀬さんに乱取りや打ち込みをさせてもらうのを目標にしたい……」
「自分は親に死にたい、殺してくれと言っていました。でも、目が見えなくても頑張っている初瀬さんを見て本当にカッコいい大人だと思った。自分は健康なのに死にたいなんてダサいです」
「何も障害がなく生活していたのに、一生懸命生活している障害を持った人をいじめていた自分が恥ずかしいと思います」
半数以上は就職先がないまま出院
以前の「ルポ・少年院の子どもたち」でも触れているが、少年たちの中には過去にいじめやネグレクト、虐待を受けて育った子が少なくない。彼らの育った環境と犯罪の背景には当然ながら密接な関係がある。
「僕は何年もいじめられた。友達もなく、誰も支えてくれなかった……」「家族に捨てられた……」。人間の基礎を築く段階に歪があったということだ。
もちろん犯罪を容認しているわけではない。少年といえども犯罪は犯罪である。ただ、誰しも初めから人を傷つけたい、迷惑をかけたいと思って生まれてきてはいないはずだ。
彼らは基礎を築く時期に階段を踏み外している。それを正常に戻すための教育機関が少年院ということだ。しかし、ここでの生活が終わったからといって、年齢相応の生活に戻れるわけではない。
出院時に就職先が決まっている割合は30%弱。入試を経て高校に入り直したい、もしくは高卒認定試験を受けて大学に進学したいという割合は20%弱。そして半数以上が就職希望でありながらも、就職先がない子たちである。
実はここが矯正教育一番の問題点なのではないかと考えている。