2024年12月2日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年6月17日

 また今後中国が労働党新政権に平和攻勢を掛けてくる可能性も排除できない。日本の貢献も重要である。先般の日米首脳会談やクワッドの共同声明が島嶼国問題に言及していることは良いことだ。結局、日米豪NZが中心となって対処して行かねばならない。

要注意な中国によるFTA提案

 中国の動きには域内から反対が出ている。やや安心する。米国と緊密な関係を持つミクロネシアの大統領パヌエロは、関係国首脳に書簡を送り、中国提案につき懸念を表明し、「拒否すべき」旨を伝えた。その後、台湾を承認するパラオの大統領も懸念を表明した。

 なお、米国は、5月26日にフィジーがインド太平洋経済枠組み(IPEF)に参加すると発表した。相打ちにして中国合意案に賛成する口実にはならないと思うが、IPEF参加自体は悪いことではない。実際フィジーは、5月30日、本件中国提案とは別途3つの合意に署名した。

 報道によれば、中国作成の「中国・太平洋島嶼国共同開発ビジョン」と題する文書案の主要点は次の通りである。自由貿易協定(FTA)の提案は要注意である。

(1)中国との間で「安全保障につき伝統的分野とともに非伝統的分野でも交流、協力を強化する」。

(2)中国はデータ・ネットワーク、サイバー保安、先進関税システムの協力を約束する。

(3)中国は二国間、多国間手段を通じ、島嶼国の警察訓練を行う(行動計画では法執行、警察協力を2022年に実施し、中国は犯罪捜査研究実験所を設置する)。

(4)中国は、中国・太平洋島嶼国FTAを提案する。

(5)島嶼国の気候変動政策を支援する。

 今後も、中国は、攻勢を続けるだろう。特に、治安維持を名目に警察権力を投入し、中国に反発する太平洋島嶼国の国民を、香港のように、逮捕、拘束することも考えられる。それらを防止し、太平洋島嶼国の自由と独立、ひいては「自由で開かれたインド太平洋」を守るためには、日米豪等が連携し、強い姿勢と行動をとる必要があろう。日本は、今般、「クワッド」(日米豪印)の東京開催を成功裡に終えたが、それに満足せず、今こそ行動すべき時だろう。

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