2024年5月4日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月8日

 ケリーの国務長官指名に関する上院証言の中から、ケリーの発言を適切に引用して、彼がアジア回帰に懐疑的であることを指摘しています。ただ、少なくとも尖閣問題に限って言えば、安倍総理訪米に際しては、ケリーは前任者のクリントンの立場を踏襲したので、とりあえずは、その心配は克服されていると言えるでしょう。

 今後のアジア政策については、ケリーは、上院証言では、リベラルの立場からの一般論を述べましたが、東アジア・太平洋問題については無経験であり、クリントン前長官が敷いた路線を無視するわけにはいかないと想像されます。

 問題は、オバマ大統領が、2010年の初めごろはクリントンの政策にゴー・サインを与えた形跡はあるのですが、その後、豪州議会での演説を唯一の例外として、クリントンが着々と進めたアジア回帰に同調する発言はしておらず、アジア回帰やリバランスに言及したことがないことです。したがって、オバマ・ケリー・ラインによるアジア政策の今後には予断を許さないものがあります。

 しかし、国際政治の大きな流れから言って、中国の興隆によって変化しつつある国際政治のバランスに如何に対応するかは、21世紀の中心課題であり、それに対峙する戦略が正統路線であることは、誰の目にも明らかです。オバマ、ケリーといえども、その現実に直面せざるを得ないでしょう。日本はそのバランス・オブ・パワーの正統路線を堅持していれば良いのです。

 現に、オバマは第一期就任直後の2009年初頭から11月までは、は親中路線をとったものの、その後の中国側の強硬な態度に反発してクリントンによる政策転換の推進を許した例もあり、ケリーも、試行錯誤はあっても、正統路線に戻ることも期待されます。

 ただ、いずれにしても、日本の対米・対中外交は、クリントン国務長官時代のようにアメリカのアジア重視路線を当然の前提条件とするわけには行かず、一層の努力を要することは不可避となります。集団的自衛権の行使容認は必須です。また、安倍総理が交渉参加を表明したTPPは、米国をアジアにつなぎとめておく重要な手段の一つであり、その戦略的意義を、いま一度よく認識する必要があるでしょう。

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