表1に示された都道府県別の投票率の差異は、各都道府県の特徴を表しているのか、それともこの1回の選挙だけで偶然に現れた傾向であるのかを確かめるため、それ以前の19年に行われた衆議院選挙の投票率との相関を図2に示した。
これを見ると、衆議院・参議院の違いはあれども、相関係数は+0.74で2つの選挙で一方の投票率が高い地域は他方の選挙でもおおむね投票率が高いことが分かった。ちなみに図中の黒線は45度線を表しており、2つの選挙の投票率が全く同じ県はこの直線上に存在することになる。しかし、図2では全ての県で45度線の上方に点が打たれており、21年の衆議院選挙の方で投票率が高いということが見て取れる。
地域別の1人当たりの政府支出
次に都道府県別の有権者1人当たりの政府支出を検討する。このデータは内閣府の『県民景経済計算』から得ることができる。県民経済計算の政府支出は、財政上の決算が確定してから集計されるため、公表にやや時間がかかる。表2は17年時点の有権者1人当たりの政府支出を示している。
表2を見ると、有権者1人当たりに基準化して比較した場合、おおむね地方部に対する政府支出が多く、下位の地域は首都圏または、政令指定都市の存する概ね都市部の府県が含まれることが分かる。全国どの都道府県の有権者であろうとも、市民生活に必要な最低限度の行政サービスgが公平に与えられるべきであるというシビル・ミニマムの考え方に従えば、地域i (i=1~47)の有権者数N(i)に対して、その地域(都道府県)への基本的な政府支出の総額G(i)は、
G(i)=g×N(i)
となるはずである。この両辺を有権者数で除すと、
G(i)/N(i)=g
で、1人当たりの政府支出はgで一定となるはずである。しかし、表2のとおり、地域ごとの1人当たりの政府支出G(i)/N(i)=g(i)は固定のgではなく、都道府県別にかなり開きがあることが分かる。すなわち、政府支出の決定において、有権者1人当たり単価gでいくらというような単純な構造にはなっておらず、オプションのファクターが加味されるべきであることを意味する。