2022年6月27日(月)

都市vs地方 

2022年6月23日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 そこで、横軸に2007年以来の過去9回の国政選挙の地方別投票率をとり、縦軸にその地域の1人当たりの政府支出の関係をプロットしたものが、以下の図3である。

(出所)横軸:2007年以来の過去9回の国政選挙の地方別投票率(%:総務省)をとり、縦軸にその地域の有権者1人当たりの政府支出(円:内閣府の『県民経済計算』)をとったもの。2019年の選挙に対応する財政支出は2018年の県民経済計算(H23年基準)を代用 写真を拡大

 すべてのデータをプールしてしまうと、データの点は平面上にまんべんなく広がり、両者の相関はないようにみえるが、各国政選挙の年別にデータを区別(色分け)して傾向線を引くと、それぞれの国政選挙では右上がりの傾向が見てとれる。すなわち、投票率が高い地方ほど、有権者1人当たりの政府支出の額が多くなっている可能性がある。

 図3を見ると投票率と政府支出に正の関係がありそうであるが、政府支出の全てが投票率で決まっているとは限らない。たとえば、表2では第2位に福島県がランクされているが、当然に東日本大震災からの復興予算の要素を加味しなければならない。また、東京都は都市部で1人当たりの政府支出は10位にランクされているが、これは東京都が首都であり、それだけ国全体の行政のため支出が多いことが想定される。また、沖縄県が8位にランクされていることは沖縄振興策の存在も考えられる。そして12位に北海道がランクされているのは当然に行政投資の対象となる地域の面積が大きいことを考慮しなければならない。

 そしてここでは、それらのさまざまな地域の特性を考慮したうえで、さらに投票率の多寡が行政支出の算定に影響を及ぼしているかを確認したい。すなわち、投票率の高い選挙区は政権にとって「大事な選挙区」とみなされているかと言い換えることもできる。

投票率1%で政府支出はいくら変わるか

 そこで、以下では各地方の政府支出額を有権者1人当たりに基準化したG(i)/N(i)=g(i)を、①投票率(%)、②都道府県面積(北海道対応)、③東京都ダミー、④沖縄県ダミー、⑤福島県ダミー(震災復興対応)、⑥都道府県別経済状況の差を考慮するため有権者1人当たりの県内総生産、選挙実施時の社会環境の違いを調整するため、⑦2007年、⑧2009年、⑨2010年、⑩2012年ダミーで説明することを考える。ここでは、データの揃っている2007年から2017年までの8回の国政選挙について、回帰分析を行った。

 そこで、有権者1人当たりの政府支出g(i)は、以下の結果が得られた(推定された係数は、面積は5%水準で有意、他はすべて1%水準であり、信頼できると判断される)。

 さて、上式の結果を読み解くことにしよう。まず定数項が967968であるから、地域に関係なく1人当たり97万円の固定的な政府支出(シビル・ミニマム)がなされていることになる。次に、注目の投票率(%)の偏回帰係数は12409であるから、投票率1%で1万2400円余りの政府支出が増加することになる。

 これが投票率の効果であるとすると、投票率1%の下落で基本政府支出97万円弱の予算の1万2000円分、すなわち1.2%~1.3%分の配分が減少する可能性があることになる。このほか、東京、沖縄、福島ダミーは何れも仮定した地域特性を反映して、政府支出が多めとなることが確認できた。県内総生産はマイナスの係数が推定されたことから、1人当たりの県内総生産が高いところにはやや減額し(その逆のところはやや増額することで)、地域間の所得再分配の要素がみられることがうかがえる。

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