NATOへの責任転嫁の狙いは?
北大西洋条約機構(NATO)が悪いという説も、侵攻開始の過程を説明できない。2021年11月、ロシア軍はウクライナを取り囲むように兵力を配置した。そして12月から今年2月にかけて、ロシアはNATOに新規加盟停止などを要求し、米国は現実的なミサイル配備の議論や信頼醸成を提案することで応じ、ロシアも交渉を準備していた。しかし突然2月21日に、「ウクライナのネオナチ政権がロシア系住民に対するジェノサイド(大量虐殺)を行っている」と主張して、ウクライナ東部にある2つの「人民共和国」の独立を承認。それに基づき、2月24日にウクライナ全面侵攻を開始した。
この流れは、ロシアが現実の安全保障問題に対処するために合理的に行動したというより、プーチン政権がウクライナの全面的支配を行うために「NATOの脅威」や「ロシア系住民対ネオナチ」という構図を利用してロシア世論を誘導している、と読む方が正確である。実際に各種世論調査でも、……
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