プーチンはウクライナをロシアに吸収合併し、ベラルーシとの3カ国よりなる「ミニ・ソ連の再興」を夢見たのだろうが、結果としては、国連憲章にある戦後の秩序を壊し、ロシアの国際的な地位にも大きな損害を与え、制裁によりロシア経済も疲弊させている。
オースティン米国防長官はウクライナ訪問後、ロシアを弱体化することを目的にするとの発言をして、一部から批判されたが、キッシンジャーは、プーチンがそういう状況を自ら作り出していると指摘している。その通りである。
ウクライナ戦争により世界のバランス・オブ・パワーは大きく変化している。このことにつき、ワシントンポスト紙コラムニストのデヴィッド・イグネイシャスは、5月17日付け同紙掲載の論説‘The new balance of power: U.S. and allies up, Russia down’で概観を試みている。イグネイシャスは、以下の諸点を指摘する。
・単純に言えば、米国と欧州の同盟国は上に上がり、ロシアは下に下がった。
・プーチンの誤算は中露関係に影響を与え、中露分断の機会もあり得る。
・中露の勢いが削がれる中、米国はアジアでの戦略パートナーシップを推進。
・インド、サウジアラビアなど湾岸諸国、東南アジア諸国、ブラジルといった「重要な中級国家」において米国は機会を持つ。
・米の軍事力、情報優位、戦略的パートナーシップは圧倒的に強いということを、世界中が想起。
イグネイシャスによる上記の俯瞰は、大体当たっているように思われる。