「中東防空同盟」の具体的な加盟国、枠組みなどの詳細については公表されていないが、対イランを目的としていることは、ガンツ国防相も明言していることであり、間違いない。漏れ伝わって来る情報によれば、「中東防空同盟」は、ミサイル迎撃システムと地域的なレーダーシステムのネットワークから構成されているとされる。なお、「同盟」と名付けられてはいるが、通常の意味での軍事同盟ではなく、レトリック的なものであろう。
米国の狙い通りに運ぶのか
米国がイスラエルとアラブ諸国との関係改善を後押しし、「中東防空同盟」を主導するなどしているのは、米国のグローバルな戦略の一環であると考えられる。米国は、インド太平洋への軸足移動を進めるべく、中東のことは中東でやってもらいたい、具体的には、イランの脅威への対応は自分たちでやってほしいということである。
それには、イスラエルとサウジやUAEなどのアラブ諸国とが関係強化し、協力してイランと対峙するのが最も都合が良い。ただ、このシナリオがうまく運ぶかどうかは予断を許さない。
イスラエルとしては、この過程で、パレスチナ問題をアラブ諸国が棚上げしてくれることを望んでいよう。しかし、「アラブの大義」とされるパレスチナ問題をアラブ諸国がそう簡単に見逃すかどうかは疑問である。こうした動きの中、イスラエルおよびアラブ諸国とイランとの緊張が高まっていることだけは確かである。