2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年7月25日

 7月9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が、社説で、安倍晋三は日本を再び世界の舞台に押し上げ、長期政権の総理は経済と外交において並外れたレガシーを残したと称賛している。

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 このFTの社説は、
①安倍は長年の経済、外交の停滞から日本を国際舞台に引き戻した。
②そのレガシーは政策にあり、安倍の名前は常に「アベノミクス」との関連で記憶されるだろう。
③ナショナリスト的な、時には修正主義的な歴史の理解は特に韓国との間で問題となった。
④自己主張を強める中国への懸念と相俟って、安倍の安保政策は「先見の明があった」。
⑤安倍の名前は日本を超えて世界に生き続けるだろう。
と述べる。社説は、アベノミクスを前向きに評価する。道半ばでコロナ禍に遭遇し、「安倍の大胆な政策をもっと続ける必要があったが、それが齎(もたら)した成果は日本の利益になった」という。

 安倍晋三論の議論は他でも続いている。7月8日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)の社説は、「戦後の日本の総理で、安倍ほど重要な指導者はそういない」という。最大の賛辞だろう。7月11日付のワシントン・ポスト紙(WP)社説は、「安倍は余りに早く逝ってしまった」と書く。これ程まで世界から評価される総理は少なくとも中曽根総理以来であろう。

 世界から寄せられる弔意を見れば、安倍元総理が如何に大きな評価と信頼を得ていたかが分かる。弔意を表した世界の指導者達のうち注目したのは、バイデン米国大統領、トランプ前米国大統領、インドのモディ首相、マクロン仏大統領、台湾の蔡英文総統、韓国の尹錫悦大統領などである。ウクライナ戦争で日本と対立するプーチンも弔電を送った。

 主要20カ国・地域(G20)外相会議に出席中の中国の王毅は元総理の容態を気遣い、その後中国外務省は「安倍元首相は生前、日中関係改善と発展のために貢献した」と哀悼の意を表した。99歳のキッシンジャーもニューヨーク総領事館に弔問し、その際「安倍元総理は日本を米国にとって掛替えのない同盟国に、そしてアジアの体制の不可欠な柱に育て上げた」と述べた。

 バイデンは3日間の半旗掲揚を命じるとともに、G20会議でインドネシアにいたブリンケン国務長官を弔意表明のために急遽日本に派遣した。7月15日には、マレーシアのマハティール元首相が、安倍元総理の自宅を弔問した。


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