2024年4月26日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年7月29日

不透明感を一掃するために政府ができること

 具体的には、次の5点をお願いしたい。

 1つは、現状分析である。日本の今回の感染拡大は、前回、オミクロン初期の流行を抑え込んだことで、罹患による免疫獲得数が欧米に比べて少ないこと、また、6月の猛暑の影響があったこと、欧米に比べて10代以下のワクチン接種率が低いことなどの原因が考えられる。仮にそうであれば、どれも必然的な理由であり、政府にも、社会にも落ち度はないことを確認すべきだ。責任転嫁のための犯人探しは不要である。

 2つ目は、重症者、死者の数字が欧米に比べて極めて抑制されていることを説明すべきだ。また、今回のオミクロンBA.4/5の症状についても、詳しく説明して経済活動を抑制する必要のないことを国民に訴える必要がある。

 現在は、漠然と地方からの「特別措置の申請がない」ということでノーマルな体制が続いているだけだが、政府として一歩踏み込んだ経済活動の「ノーマル宣言」が必要である。

 3つ目は、改めてワクチン接種率の確保を訴えていただきたいということだ。3、4回目接種を加速するだけでなく、10代以下に対する接種を改めて徹底することが必要だ。

 親たちの間に感情的な忌避論があるのは否定できないが、政府がこれを恐れてはダメだ。粘り強く誠意を込めて説得を続ける姿勢が必要だ。

 4つ目は、政府の体制である。経済閣僚を担当大臣にして経済重視のポーズを取る一方で、感染症学者に別の慎重なメッセージを出させて「国民にはその平均値を自分で計算させて、それが政府見解だとする」という手法は、余りに姑息だ。首相が方針を明確に語り、全閣僚と政府委員の専門家はその首相方針を練り上げるために一致すべきだ。

 5つ目は、政争の排除だ。過去2年半の間、主要な複数の野党が「鎖国でゼロコロナ、経済は止めて国民は全面バラマキで救う」などという異常な政策を掲げたことがある。党利党略に過ぎないが、世論は大いに混乱した。

 また、これとは別にワクチン忌避論を政治に持ち込む勢力が今回の参院選では活動していた。こうした妨害に関しては、「スルー」するのではなく、政府は毅然とした姿勢を示すべきだろう。

 繰り返し申し上げるが、コロナ禍における現在の日本の状況は危機ではない。危機ではないのに、社会に不透明感が広がることで、それが危機になっている。政府には、毅然として、誠実で一貫性のある説明で不透明感を一掃していただきたい。

   
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