4月下旬、モスクワで安倍首相とプーチン大統領による首脳会談が予定されている。日本の首相としては、10年ぶりのロシア公式訪問となる。
残念ながら、領土問題の進展は期待薄である。両国の主張に隔たりが大きく、政治的妥協も許されない国内環境が双方に存在するからだ。特にロシアは「反プーチンデモ」が行われるなど、国民の支持を得られているとは言い難い状況にあり、そうした中での領土問題の譲歩は、致命傷にもなりかねないからである。
軋む中露関係を背景に、ロシアは今後も日本との関係強化を求めてくると予想され、日本側が領土問題で拙速な対応を行う必要もない。中露関係の帰趨をしっかり見定めて、それが日露関係に及ぼす影響を冷静に分析することの方が先決だ。
そのためには、二国間関係のみを切り取るのではなく、俯瞰した戦略的視点が必要となる。今回の日露首脳会談の「地ならし」として、2月に森喜朗元首相がプーチンと会談したが、民主党政権下でも森元首相が特使として起用された。これは他に人材がいない証左でもある。戦略的視点を備えた次世代の対露交渉のキーマンを育成することが、領土問題解決の近道ではないだろうか。
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