2024年11月23日(土)

WEDGE REPORT

2013年5月30日

 注目すべきは、「ノキアで働いていた社員が会社の発展に役立っている」というアンティ代表の話だ。フィンランドは雇用の流動性が高い。競争力のなくなった産業から、競争力のある成長産業へ人が移り企業の発展に役立っている例が多いそうだ。

 競争力のある企業を育てるには、起業を促し、育成するシステムが必要だ。18~64歳までの人口に占める起業活動を行っている者の割合(2011年)は、日本5.2%に対して、フィンランドは6.3%。だが、ポイントはそこではなく、「ベンチャー企業を育成する公的機関や民間ファンドが充実している」(ジェトロ海外調査部・岩井晴美アドバイザー)ことだ。なかでも産業創出、育成を担うテケス(フィンランド技術庁)は海外にもその名を轟かせている。

 テケスは「企業ごと」でなく、「プロジェクトごと」に厳しく審査した上で、助成金を出す。ビジネスや金融のエキスパートを採用し、日本人を含めて外国人も在籍する。

 こうした“目利き”が厳しい審査を行い、個々の企業にあったアドバイスをすることで、企業の成長が促進されるという仕組みだ。テケスの情報は徹底的にオープンにされ、外部から厳しい評価にさらされる点も成功要因のひとつと言われている。ロビオもいくつかのプロジェクトでテケスの力を借りた。

 社会保障が充実し、倒産や解雇があっても、食い扶持には困らないといった背景もあるが、世界競争力ランキング(世界経済フォーラム、2012年)で3位(日本は10位)と世界屈指の競争力を誇るフィンランドの“仕組み”に、日本が学ぶことも多いのではなかろうか。

◆WEDGE2013年5月号より

 

 

 

 

 

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