2024年4月20日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年8月23日

 それでも、そこは野球の本場であり、この民間主導の夏のベースボールには、それなりの人材が集まる。例えば、数年に一度、甲子園のベストメンバーを選抜して全日本チームを結成して、オールUSAの高校生チームと対決するという親善試合が組まれることがある。大抵は基礎が確立している日本が勝つが、米国側も結構善戦する。こうした夏でも野球をやっている高校生というのは、大学野球にスカウトされるのを狙っているケースが多い。

大学でガラッと変わる環境

 高校野球と違って、米国の場合は大学野球が非常に盛んである。著名な大学には必ず「運動部の野球部」があり、スポーツ選考で全国から優秀な選手を集める。

 リーグ戦の多くがTV中継され、地域を代表する大学の試合にはその大学の関係者だけでなく、地域の野球ファンも大勢観戦に訪れる。そして、リーグの優勝決定戦があり、全米選手権もある。日米の大学野球の親善試合が行われることも多いが、大学レベルになると総合力で米国の方が強いようだ。

 というわけで、高校から大学にかけての学生野球のシステムについては、日米で大きな違いがある。丸刈り、パワハラ、熱中症対策、単純すぎる先輩後輩カルチャーなど、日本の甲子園カルチャーには改善すべき点が多いのは事実だ。けれども、野球に夢を託す若者にとっては、夏の季節を思い切り野球に打ち込めるという点では、日本の方が裾野の広さを含めて大きなアドバンテージがある。

 大谷翔平の「伝説づくり」が続く中、米国の野球ファンによる「サマー・コウシエン」への視線は、益々熱を帯びてくるのは間違いないであろう。

   
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