2022年9月27日(火)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年8月23日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 14日間にわたる高校球児たちの熱戦は、仙台育英高校が東北勢での初優勝で幕を閉じた。かつて甲子園で活躍した高校球児たちは今や、続々と海を渡って大リーグで活躍するようになった。

(gyro/gettyimages)

 甲子園の全国高校野球は、米国では「サマー・コウシエン」という名で知られている。以前から有名だったが、近年は何と言っても、大谷翔平選手を輩出したことで注目度が上がっているのは事実だ。では、これに対して、米国には甲子園大会のようなものがあるのかというと、実情は多少異なっている。

野球漬けの日々ではない

 勿論、米国にとっての野球は事実上の国技(ナショナル・パスタイム)とされており、現在でも4大プロスポーツの一角を占めているし、子供たちの参加するリトルリーグは人気がある。だが、このリトルを卒業する13歳という年齢に差し掛かるあたりから、実は野球をプレーする人口は少しずつ減っていってしまう。

 理由としては、まず、バスケット、サッカー、(アメリカン)フットボール、あるいはラクロス、アイスホッケーなど、さまざまなスポーツに子供たちが流れていってしまうということがある。近年では、ヒスパニック系やヨーロッパ系の移民社会を中心にサッカー人気がジワジワと拡大している。また黒人の子供たちの場合は、バスケットの方が華やかでアスレチック(身体的に躍動的)ということから「野球離れ」が起きているという指摘もある。

 その結果として、高校生のレベルになると、スポーツ部活の全体に占める野球の位置付けは相対的にかなり低下する。まず、ほとんどの州のほとんどの高校において、正規の高校野球部というのは通年ではない。

 具体的には、3月から6月の「春のシーズン」に限られている。毎年3月になると同じようなメンバーが集まってきて、6月初旬まで戦って解散する、そんな格好である。

 運動能力に優れた生徒の場合、春は野球をやって投手兼4番を打ち、秋になるとフットボールに入ってクオーターバック(QB)をやるということもある。冬のシーズンにはバスケがあるが、さすがにこれは専門性があるので3つともやるのは難しく、その季節は陸上部に入って基礎トレをする選手も多い。

 高校の部活で野球とフットボールを掛け持ちしていたというのは、結構聞く話で、例えば、引退した野球の名選手「Aロッド」こと、アレックス・ロドリゲス選手(マリナースからレンジャースを経てヤンキース、現在は解説者)などは、高卒の段階でMLBのプロ野球と、NFLのプロフットボールの両方のドラフトで指名されたというが、そうしたケースは結構ある。要するに、野球にこだわって通年でプレーするというチャンスは与えられていないのだ。

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