2022年10月3日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月15日

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 ミャンマーの情勢はウクライナ情勢や台湾問題など諸々の危機の中でほぼ忘れられている。バングラデシュの鉄条網に囲まれた難民キャンプに収容されているロヒンギャの絶望的な状況も忘れられている。

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 7月、国民統一政府(NUG)と共謀して軍政に対するテロを主導したなどとして、民主活動家チョーミンユおよび国民民主連盟(NLD)の元議員ピョーゼヤートーら計4人の死刑が執行された。東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国カンボジアのフン・センが6月に死刑執行の停止を求める書簡をミン・アウン・フライン(国軍総司令官)に送った経緯があるが、ASEANは「死刑執行を含む長期化する政治危機への懸念」を表明し、ASEANが求める「五項目の合意」の履行が進まないことに「深い失望」を表明している。ミャンマーに関与し情勢を打破する能力がASEANにないことが改めて明らかになっている。

 Economist誌8月22日号は、ミャンマーの軍事政権に抵抗して奮闘するNUGは資金の支援を必要としているとして、米国がNUGを正統な政府として承認し、もって凍結したミャンマーの資産を彼等に使わせることを示唆する社説を掲げている。社説は次のように主張する。

・NLDの議員は「影の政府」(国民統一政府:NUG)を組織している。ビルマ族の排外主義との評にかかわらず、彼らは少数民族の代表を迎え入れた。彼らはロヒンギャの待遇を改善するとも約束した。NUGは殆どの抵抗勢力を含めビルマ族の大多数の支持を獲得している。幾つかの地域では、地方の行政組織を形成し、学校と診療所を運営している。一方、軍は反乱勢力を打倒する能力がないことを証明した。

・しかし、NUGは絶望的に資金が不足している。彼等は西側から資金の支援を必要としている。もし、米国がNUGを正統な政府を承認すれば、NUGは、クーデタの後に米国が凍結した10億ドルのミャンマーの資金の所有権を主張出来るであろう。そのようなジェスチャーには、外部世界は軍の残虐行為を不作為によって黙認する積りはないことを示す利点もあるであろう。

・勿論、それは軍事政権の終焉を保証はしない。軍事政権は資金と火力において圧倒的な優位性を維持している。中国という強力な同盟国もある。しかし、抵抗運動は18カ月間不利な条件を克服してきた。この条件を有利な方向に動かすのに多くは要しないであろう。

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 この社説は、軍の力が圧倒的であることを認めつつも、NUG、NUGと連携する国民防衛隊(PDF)、および少数民族のグループから成る抵抗勢力が頑強な抵抗を維持して来たことに着目し、僅かなりとも情勢を動かすために、米国がNUGを正統な政府として承認し、もって凍結したミャンマーの資産を彼等に使わせることを示唆している。

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