2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月15日

 近年は政治的な動機で政府を承認することが行われる傾向があるようであるので(マドゥロ大統領が選出された2018年のベネズエラの選挙が公正でなかったとして、米国などがグアイド国会議長を暫定大統領として承認したのもその例であろう)、米国がNUGを承認することはないと言い切ることは出来ないのかも知れない。国連で軍事政権とNUGのいずれの代表がミャンマーを代表するかの問題が決着していないこともある。

 しかし、NUGは地下組織である。彼等の奮闘ぶりは讃えられるべきであるが、政府とは到底言い得まい。彼等は過激化しており、一般市民に職場放棄などを含め軍事政権との関係を一切断つよう要求し、軍事政権に協力していると見做される市民を殺害する。軍よりも抵抗勢力を怖れる市民もあると報じられている。

軍事政権の転覆も全土掌握も進まず

 外交情報サイトThe DiplomatはNUGのドゥワラシラー(Duwa Lashi La)大統領代行(彼はカチン族である)とのインタビュー記事(7月19日付)を掲載しているが、彼は抵抗勢力が国土の50%以上を支配し、数十の町に自治組織を作っているなどと述べ、いずれは真の連邦国家を作る目標を語っている。しかし、これは割引いて聞く必要があろう。

 都市と資源を支配しているのは軍事政権である。抵抗勢力は寄せ集めの勢力であり、武器に事欠く状況である。一定地域を支配していると言っても、それは軍が攻勢に出れば引き、軍が引けば出るといった類のことに違いない。エコノミスト誌は5月21日号で、(地方メディアは威勢の良いニュースを流しているが)「抵抗勢力は自身のプロパガンダを信じるリスクを冒している」と書いたことがある。

 抵抗勢力に軍事政権を転覆する力はないが、軍事政権による全土掌握も進んでいない。ミャンマーの憲法によれば非常事態宣言の期間は1年だが、半年ずつ2回まで延長可能であり、7月31日、2回目の延長(23年2月まで)が決定された。

 憲法はその後6カ月以内に選挙を行うことを規定しており、軍事政権は23年8月までに選挙を行うとしている。軍事政権は選挙までに全土掌握を目指すであろうが、そのことは必然的に更なる流血を招くであろう。

   
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