2022年9月27日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年9月15日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

科学技術振興機構特任フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。日本貿易振興機構(JETRO)上海センター所長、JETROアジア経済研究所新領域センター長などを経て、2020年より現職。著書に『習近平「新時代」の中国』(アジア経済研究所)ほか。
 

 過剰な流動性は株式や不動産に向かい、その価格は急上昇した。価格上昇を期待して不動産投機需要が拡大し、地方政府も土地供給を続けてバブル状態が現出したわけである。そして、過熱が心配される状況になると、中央政府が金融を引き締め、バブル(価格上昇)は一服するというサイクルを繰り返してきた。

 バブルが債務拡大を招くのは世界共通である。19年末の「債務(政府+民間)の対GDP比」は262.9%で日本の378.3%より低いが、米国の252.3%より高い。同推計を作成した国際通貨基金(IMF)は中国の金融当局に「バブル崩壊」の懸念を伝えている。

 もとより中国政府も問題意識を有しており、特に16年以降は、債務削減(デレバレッジ)政策を強化しているが、効果はまだ不十分である。債務内訳をみると、企業部門の債務拡大は止まったが、家計部門は拡大している。これは住宅購入の結果と思われる。政府による債務肩代わりが進む米国、日本と異なった様相を示している。

政府の対策と今後

 政府のデレバレッジ策は、不動産企業にも及んだ。20年8月には、同企業に対して「3つのレッドライン」として①竣工前販売代金を除いた総負債比率(総負債÷総資産×100)が70%超、②純負債資本比率(有利子負債から現預金を控除したもの÷資本×100)が100%超、③現預金短期負債比率(現預金÷短期負債×100)が100%以下、が示されてこの基準に抵触しないよう財務状況を健全化することが下命された。

 同時点で不動産販売トップ31社のうち9社が全項目、5社が2項目、12社が1項目に該当し、該当なしは5社にとどまったと報じられた。また、21年1月からは、金融機関に対し、住宅ローン融資額の上限が設定された。供給・需要両面からする中国版総量規制である。結果、不動産(特に住宅)取引は縮小し、21年夏には不動産大手の恒大グループなどの経営危機が表面化することになり、現在も債務整理が続いている。

 当面のポイントは、こうした施策によって不動産価格が適正化され、投機ではなく居住するための住宅需要が満たされることである。現在、平均住宅(90平方メートル)価格の年収倍率をみると、全国が6.9倍、北京18.5倍、上海15.1倍などとなっている。そしてさらに中長期的には、本稿で述べたような不動産に過度に依存した成長モデルを是正することができるか否かが注目されるところであろう。

  
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