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2022年9月21日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 道傳は、高村に対して、これから向かうべき社会の在り方について問う。高村は答える。

 「公正、公平で偏っていないこと。公正な社会を守る政治家の立場が、公平でない宗教団体とつながっていてはいけない。公平な公共空間を大事にすることが公正である。そこで人が生かされている社会に生きたい」

ロスジェネが直面する「人間関係の希薄化」

 政治学者の中島岳志は、最近の20年間にわたる「新自由主義」による、派遣などの非正規の青年たちの増加にみられるように、個人に「自己責任」を強いる社会のありようをテロから読み取る。さらに、戦前の1920から30年代のテロが相次いだ時代との比較によって、われわれに新たな言論空間をみせてくれる。

 「超国家主義」の研究を続けてきた、中島はこれまで、ことあるごとに「現代社会にテロは起きて欲しくない。本当に起きて欲しくない」と著作に綴ってきた。しかし、テロは起きた。

 中島は、今回の事件について「統一教会のみに絞って問題を考えるのは乖離している」と指摘する。

 「バブル崩壊後から、2000年を境目にして、雇用の自由化が進展して、自己責任論が社会を覆ってしまった」と、語る。

 今回のテロ事件と、2008年の東京・秋葉原における無差別殺人事件を引き起こした、加藤智大(当時25歳・今年7月に死刑執行)との類似性について、中島は次のように語る。

 「(容疑者)2人の歩みは似ている。家庭内では母親と問題を抱えていた。県内の有名高校に進学したものの、挫折し、希望する大学にいけなかった」。加藤と今回のテロの容疑者の山上徹也は、同世代である。加藤の裁判は、中島は傍聴を続けてきた経緯がある。

 さらに、中島は16年に起きた、相模原・障がい者施設殺傷事件、19年の京都アニメーション放火殺人事件なども、容疑者に共通した要素があることを強調する。

 「(加害者の青年たちは)なぜ、自分が追い詰められたのか社会の構造がわからなかった。相模原の事件では、自分が苦しいというところから、大きな飛躍があって、障がい者が原因ととらえた」

 安倍元首相を暗殺した、山上容疑者も「ロスジェネ」世代。「彼らの世代もすでに中年化してきた」と、中島は語る。こうした「ロスジェネ」世代に対して、手厚くさまざまな政策がなされなければならない、と強調する。そのなかでも、「貧困」対策のカネも必要であるが、彼らが追い込まれているのは、「人間関係の希薄化」だと指摘する。

 「『助けて』と言えない。(安倍元首相を暗殺した)山上容疑者は、統一教会に向かってしまった」

重なるテロとクーデターの時代

 中島は、学者らしく淡々と語りながらも、「自己責任論」に対しては、静かな怒りともいえる言葉を紡いていく。

 「ロスジェネ世代は、自己責任論に苦しめられている。(そうした青年たちが)再生産されている。自分の能力にともなって、責任と選択がある、というのはそれでいいのか。偶然性と人格、生まれによって(人生が)決まることが多い。自己責任論は無理がある。別の立場から考えれば、能力も偶然である。自己責任論は行き過ぎだ」

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