2022年10月6日(木)

田部康喜のTV読本

2022年9月21日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 ETV特集「ロングインタビュー 銃撃事件と日本社会」(9月17日)は、安倍晋三元首相の暗殺事件後、メディアをまるで一色に覆ったような「旧統一教会と自民党」の問題とは、一定の距離をおいて、多様な言論空間を目指す優れたインタビュー番組だった。

(つのだよしお/アフロ)

 インタビューは、もとより対象に対する事前の準備が欠かせない。しかし、それだけでは、今回のような秀作は生まれない。インタビュアーに言葉のやり取りの〝運動神経〟が問われる。つまり、相手の答えに対して、瞬間的に新たな方向性を見出して、準備していた内容とは異なっていても興味深い内容を引き出していく。

 取材の醍醐味のひとつでもある。今回は、インタビュアーにベテランアナウンサーの道傳愛子を配して、作家の高村薫と政治学者の中島岳志、日本文学研究者のロバート・キャンベルそれぞれから引き出した、テロと民主制についての卓抜なインタビュー作品をつくりあげた。

「他者への目配りが少ない社会」

 7月8日11時31分、近鉄・大和西大寺駅前で、安倍元首相はテロの銃撃に倒れた。国葬は9月27日に予定されている。

 作家の高村薫は、大阪の自宅の書斎で執筆中だった。テロを知ったのは、新聞社からコメントを求める電話があったからだ。テレビのスイッチを入れると、襲撃の場面が繰り返し流れていた。

 高村は語る。

 「なぜ元首相が狙われたのか?いまひとつわからない。容疑者も言葉にできない、あいまいなところにある」「統一教会について、忘却と発見があって、わたし自身が愕然とした」

 「山上(徹也)容疑者によって、統一教会に気づく。みにくい部分が表にでてこない。こぎれいな街にごみがおちていない。ごみを拾ってくれている人がいるのに。社会のみえないところをみる窓が必要なのではないか」

 インタビュアーの道傳が問う。「話題にしない、しなかったことにする」と。

 高村は答える。

 「他者への目配りが少ない社会、自分のことで精一杯、他者への目配りがなく、それでも社会は回っている」

 8月3日、高村ら7人の作家、評論家、写真家で組織している「世界平和アピール 七人委員会」が、声明をだした。その主眼は、テロの当初からいわれている「民主主義の危機論」に対する警鐘ともいえるものだった。

 「凶行以上に国民を困惑させたのは、統一教会が名称を変えて21世紀の日本で営々として生き延びていたこと、そして、親の入信で苦難の人生を強いられた子どもたちの実態が、本件によって浮かび上がったことである。

 そのような宗教団体である旧統一教会にいま現在、元首相や現職閣僚を含む約100人の政治家が関りを持ち、選挙で多大な便宜を図ってもらっており、何が問題だと居直る者もいる。

 弱い立場に追い込まれる国民の幸せも、公共的な意思決定を目指す民主主義も彼らの目には入っていない」

 民主主義がちゃんと機能しない。政治は統一教会と一体化して、これからどうするのか。国民に説明しないと根本的に危うい。政治家が国民の代表としているその過程が危うい。

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