2024年11月22日(金)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年9月28日

会社のアラムナイ・ネットワークとは何か?

 それでは例によって質問である。あなたの会社にはアラムナイ・ネットワークが存在するであろうか? つまり「退職した人達と定期的に繋がり、情報交換をするような仕組みはありますか、という問いである。退職と言っても定年退職ではない。中途退職して他社に移った人達と「個人レベルではなく会社として繋がっていますか?」と問われれば、多くの日本人はNoと答えると思う。自社に見切りをつけて去っていった人達と、何故に繋がりを持たねばならないのかというのが率直な思いであろう。

 私が社会人になったのは1990年である。もう30年以上サラリーマンをしているわけだが、この間、日本人の転職に関する意識は大きく変わった。私が就職した頃はまだ終身雇用が前提であり、転職に関してはあまりポジティブなイメージがなかった。一生を賭けるつもりで就職したが業務についていけなかった、社風が合わなかった、などドロップアウトのイメージが強かったのである。辞めたいと弱気になっている人に対して、「もう少し頑張ってみろ」と会社からの遺留も強かったように思う。「勤め上げる」というのが社会的なValueであったのだろう。

 やがてヘッドハンターなる職業の人が登場し、優秀な社員を高額の報酬で他社に引き抜くような事例が出てきた。転職先が競合先であることが多く、高額の報酬へのやっかみとも相まって、転職イコール裏切り者とのイメージがあった。今では若い人を中心に、キャリアアップのための転職が当たり前となっている。私自身、4回の転職を経験して今は5社目の会社にお世話になっているが、転職のイメージがかつてドロップアウトや裏切り者だったことに隔世の感を感じる。

 しかし転職が常態化してきても、アラムナイ・ネットワークは新しい発想であろう。私が今回のコラムでこれを取り上げようと思ったきっかけは、8月29日の日経新聞にて報じられた三井住友海上火災保険に関する記事である。同社はこの9月より中途退職者を集めたアラムナイ・ネットワークを設立し、今後、若手の退職者を中心に約300人を集めて定期的に交流会を開くというのだ。

 転職先がスタートアップ企業などであれば協業を模索し、今後、再入社への道も探っていくらしい。同社では年間50人規模の中途採用を計画しているが、このうち数十人を再入社で獲得する考えだ。アラムナイ・ネットワークを通じ、これまで心理的な抵抗感が強かった再入社を増やすことまで検討しているという。


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