2024年4月16日(火)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年9月28日

 三井住友海上火災の人事施策については、本コラムの第8回『副業解禁で日本人はサラリーマン型から起業家型に脱皮を』でも取り上げた。その施策とは、同社において副業を解禁し、従業員の外部での経験を課長に昇進させるための前提にするというものである。出向や副業などで得た知見や人脈を社内で生かし、新たな事業の開発を促すことを企図した施策である。

 同社はこの施策の理由を「主力事業の成長が頭打ちになっており、多彩な人材の育成や外部との連携強化が課題」と説明しているのだが、今回のアラムナイ・ネットワークの設立は、外部との連携強化、即ち「外部知」の取り込みに向けて一歩進んだ施策と言えるであろう。ではなぜ今、「外部知」なのであろうか?

 デジタル時代において、急激な産業構造の変化が起きていることは日々実感する。それに加えてESG視点での経営の必要性が議論され、ESGの中でも最大のコンテンツである「脱炭素」に向けた取り組みを模索する企業が増えている。デジタル化はデジタル・トランスフォーメーション(DX)、脱炭素・カーボンニュートラルに関わるさまざまな動きはグリーン・トランスフォーメーション(GX)と言われる。

「デジタル敗戦」を繰り返すな

 私はM&Aアドバイザリー会社に勤務しているが、DX・GXは目下、多くの企業の投資活動におけるメイン領域になっている。しかし日系企業が検討するひとつひとつのM&Aの規模は小さく、また投資実行に至る検討期間が長い。検討した挙句に見送るという例も多い。意味をなさない投資をする必要はないが、慎重になりすぎて投資が積み上がっていない現実がある。これには経済産業省も大いに問題意識を持っている。そしてそこでのキーワードは「デジタル敗戦」である。

 経産省の産業構造審議会において、経済産業政策新機軸部会というものがあり、2021年11月から本年8月まで8回にわたって、DX・GX時代における日本企業の現状を分析している(※)。そこで浮かび上がる課題は、日本企業の収益力の低さ、人への投資の不足、特にデジタル人材育成の遅れ、デジタル投資の少なさ、スタートアップ企業の他国比の極端な少なさ、そしてそれらの帰結としての日本企業の国際競争力の低下などであり、それらを総称して「デジタル敗戦」が起こっているというのだ。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/index.html

 このデジタル敗戦が顕在化したのが、コロナ対応における行政におけるシステム的不整合、情報共有不足、デジタルノウハウ不足などであった。東京の保健所におけるPCR陽性社数が都庁にFaxで送信され、それを手計算で集計する様は世界に驚愕を与えた。そんなデジタル敗戦下にある日本の上場会社のPBRは下表の通り欧米比で極端に低く、ここまで差がついてしまったのかと愕然としてしまう。


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