2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月17日

ロシアに核使用を思いとどまらせるには

 まず、ラックマンが指摘するように、ロシアによる核使用の恫喝により、西側のウクライナ支援は強まることこそあれ、弱まることは無いし、実際そうあるべきである。核の恫喝が成功したとロシアに思わせる訳にはいかないからだ。この対応如何のウクライナ以外の紛争への影響が大きいことも忘れてはならない。

 第二に、ロシアに対しては、核兵器の使用を思いとどまらせるべく、最大限明確で効果的なメッセージを送る必要がある。米国がロシアに対して「核兵器使用はロシアに甚大な影響を与える」といメッセージを、それも、静かな形で伝えたのは評価されるべきだ。率直に言えば、米国がロシアのウクライナ侵攻前の相当早い段階で「直接軍事関与しない」と対外的に表明したのは、相当の愚策であり、今回のような行動をこそ取るべきだったと思う。
 
 第三に、論理的に考えれば、ロシアが核兵器使用により得るものは無いはずであり、また、西側としては、不幸にして核兵器が使われたとしても、実際にロシアが得るものが無く失うものの方が大きいように対応しなければならない。そうでなければ、正に、核兵器使用の敷居が将来にわたって下がってしまうことになる。

 ロシアの核兵器使用による同国にとってのマイナスを念頭に使用を思いとどまることを望みたい。しかし、万一不幸にもロシアが暴挙に出た場合には、それが戦況をロシアにとって有利に導くことが無いこと、より言えば、戦況をウクライナ・西側にとって有利に導くように対応する必要がある。

 第四に、問題は、それではそのために何をすべきかである。核兵器使用に対して臆することなく核兵器で応じるのか。そうでは無くてはならない、ということではないのではないかと思う。

 核兵器使用で応じれば、「核抑止」の論理の上では辻褄は合うかもしれないが、やはり同じ「核使用」という暴挙に出ることで「モラル的優位性」を失うことになる。核兵器使用により結局戦況は不利になったと言うことが示せれば将来も抑止は成り立つのであり、それを示すための手段は核兵器だけである必要は無い。ただ、西側の対応は戦況を大きく変えるような「懲罰的」なものである必要はあるだろう。

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