2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月17日

 9月26日付 の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「プーチンの核の脅しは無視できない」とのラックマンの論説を掲げ、ウクライナが成功しロシアが追い詰められる中で、情勢はより危険になり、出口が一層見えなくなっている、と論じている。

Андрей Глущенко / iStock / Getty Images Plus

 今やウクライナ戦争において、幾つかの敗北の後、プーチンはより多くの兵士を招集し、再度核兵器使用の脅しをかけた。サリバン米国大統領補佐官は、ロシアの核の警告は真剣に捉えるべきだと発言した。

 核戦争の可能性は米国に重くのしかかる。もし、ロシアがウクライナで核を使用すれば、ウクライナは汚染され、北大西洋条約機構(NATO)の報復も招くだろう。

 核兵器使用は最初の選択肢ではないが、それ以外が屈辱と敗北なら、プーチンは最後の賭けに出るかもしれない。プーチンは、核兵器使用が西側に甚大な衝撃を与え譲歩を迫れると思うかもしれない。

 米国はプーチンに、核兵器使用はロシアに甚大な結果をもたらすと警告した。西側は、ウクライナ支援を止めるためにロシアが核の脅しを使うことを許すべきではないとしている。

 難しいのは、戦争終結の道筋が見えないことだ。西側ではロシア敗北の必要性が喧伝されるが、プーチンか後任者との交渉による和平で終わらせるしかない。

 プーチンの戦争目的は既に縮小している。最初はゼレンスキー政権転覆だったが、今やドンバス解放だ。

 西側は、ロシアは今次侵攻前の状況まで下がるべきだとし、ウクライナは、クリミアを含む全占領地から撤退すべきと主張する。プーチンは西側の主張さえ受け入れないだろう。なぜなら、何も得ずに数千の命を犠牲にしたことを意味するからだ。

 ウクライナ軍が前進する中、ウクライナも交渉を急いでいない。現在のゼレンスキーの対ロシア嫌悪感から、西側がウクライナに交渉を強いるのは難しい。

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 ウクライナ戦争でプーチンが追い詰められる中、ロシア側の対応は紛争解決を一層困難にし、ウクライナ戦争の出口が予測困難になっているというラックマンの論説は、現状を的確に表している。ロシアによるドンバスの「住民投票」の強行とロシアへの併合は、プーチンに対しては停戦に持ち込むだけの口実を与えるだろう。しかし、現在押し返しているウクライナはこの段階で停戦交渉には応じないだろうということだ。結局、暫くは東部・南部における戦況と、ロシアによる追加的兵員動員の行方を見守るしかないだろう。

 しかし、停戦云々を論じる前に考えるべきことがある。それはロシアが核兵器を使うことを抑止できるか、言い変えれば、ロシアは核兵器を使うつもりかと言うことである。これは重い質問だが、それなりの考え方を述べておきたい。


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