2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月18日

大きな賭けに出ているプーチン

 しかし、ウクライナの事態は、9月21日の怒りに満ちた挑戦的なプーチン演説で一変する。9月21日、プーチンは国民向けに演説をし、①部分的な動員令に署名したことを明らかにし、②占領地域でロシアへの編入の是非を問う住民投票を実施すると述べるとともに、③「わが領土の一体性が脅威にさらされる場合」には「われわれが保持するすべての手段を利用する」と述べ核使用を示唆した。

 そして29日にはウクライナ南部のザポリージャ州とヘルソン州を独立国家として一方的に承認する大統領令に署名した(ドネツク州とルガンスク州は既に独立国家として一方的に承認済み)。プーチンは、これら2州を含むウクライナ東部・南部4州の「併合」に関する「条約」に調印した。

 10月4日には、ロシア議会上院が同「条約」を承認し、4州を正式に併合した。言葉が見つからない程あからさまな、国際規範に反する行為である。この独裁者の無謀さと攻撃性を国際社会は認めてはならない。

 これら4州で23~27日に実施された住民投票は、拙速で、短期間に親露勢力によって一方的に実施された茶番だ(87~99%が併合に賛成したと主張している)。核の恫喝も余りに無責任だ。なお、プーチンへの国内の反対は増大しているようであり、注目される。

 ウクライナの事態は目下プーチンが大きな賭けに出ている。クリミアとロシア本土とを結ぶ橋が爆破されたことを口実に、10月10日にはキーウを含むウクライナ各地に大規模なミサイル攻撃を加えるなどしている。しかし、上記のブランズの議論が意味を失うことはない。

 ブランズは、戦争終結のジレンマ、難しさを端的に議論する。西側は、安定(力)と正義のジレンマに直面する。正義の視点を忘れることはできない。プーチンの横暴を考えると戦争犯罪の追及も重要なことである。

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