2022年11月28日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月21日

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 10月2日に実施されたブラジル大統領選の第1回投票では、ルーラ元大統領が48%、ボルソナーロ現大統領が43%と、約5%の差にとどまった。投票日直前の世論調査では、ルーラが、支持を伸ばし、10%以上の差をつけ、過半数の票を獲得し当選を決めるとの世論調査結果もあったが、予想外の接戦となっている。いずれにせよ両者とも過半数を獲得できなかったので、10月30日に決選投票が行われることになる。

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 サンパウロの国際政治学者スチュンケルは、敗北を認めないボルソナーロによりブラジル民主主義が危機に陥る可能性があるとの論説をForeign Affairsに投稿している(9月29日付け‘What If Bolsonaro Won’t Go?’)。同氏は、次の3つのシナリオを指摘する。

(1)ボルソナーロが選挙は盗まれたと主張するが、政権交代を止めようとはしない。

(2)トランプに倣って、「ブラジルの1月6日」つまり、民主的な移行を阻害しない程度に騒乱を引き起こす。

(3)最悪の場合だが、ボルソナーロの支持者が政治的暴力を振るい、軍隊が民主主義を守れず、正常な政権移行が阻害される。

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 事前の欧米紙の社説では、いずれにせよルーラの勝利を前提に、ボルソナーロの経済政策を評価しブラジルの左傾化やルーラの保護主義的経済政策を懸念するもの(9月29日付ウォールストリート・ジャーナル社説)、ルーラの経済政策の問題点を指摘しこの選挙を最悪の選択の中でどちらがマシかを選ぶ選挙と評するもの(9月29日付フィナンシャル・タイムズ社説)等、主としてビジネス上の視点からとらえるものがある。他方、現地の有識者の意見を論説として掲載したニューヨーク・タイムズや上記のForeign Affairsの記事は、ブラジル民主主義が崩壊の瀬戸際にあるとの切迫感を訴えており、現地の危機感の高まりが感じ取られる。

 ボルソナーロは、自らの敗北を否定するために、かねてより電子投票システムにおける不正の可能性を何らの根拠なく指摘して来たが、この結果についても、自分が本来であれば当選したはずで不正が行われた等の主張を行うのであろうか。予想されたよりもルーラとの差が小さかったことから、決戦投票プロセスを拒否するようなことは無く、引き続き従来の主張を続けて選挙キャンペーンを続けるのではないかと思われる。選挙で負ければそれは不正が行われたためだとするボルソナーロ支持派が、この時点で街頭等での暴力的抗議活動に出るのか、その反応が注目される。

 いずれにせよ、最終的な決戦は10月30日となったわけであり、その差が縮小したとはいえ、3位以下の候補に投票する有権者の過半数はルーラ支持との世論調査結果もありルーラの優位は変わらないと予想される。しかし、接戦になれば、なおさらボルソナーロが敗北を認めず、この論説が指摘する3つのシナリオの中で最後の最悪のシナリオの可能性が引き続き懸念される。

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