2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年4月22日

 10月に行われるブラジルの大統領選挙へ向けて各候補者の準備が本格化しつつある。エコノミスト誌4月2日号は、選挙は経済が争点になり、ルーラ元大統領がリードしているが、ボルソナーロ現大統領が勝つ可能性もまだある、と報じている。選挙を巡る現在の状況は、概ねその通りであろう。

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 直近の世論調査では、ボルソナーロがやや挽回しつつあり、決選投票となった場合のルーラとの票差が以前は、30%近くあったものが20%程度に縮小しているが、ルーラの優位は変わってない。ボルソナーロの追い上げは、新型コロナによる経済困難の救済策としての低所得者層向けの現金給付が開始されたことによると見られており、この傾向が更に継続するのかが注目される。

 ルーラは、中道派の元サンパウロ州知事のアルクミンを副大統領候補に指名することで左派から中道派まで支持基盤を拡大しようとしており、そうなれば、確かに経済界の左派労働者党に対する警戒感を緩和する効果が期待できるであろう。もっとも、ルーラについては、その後継者のルセーフの経済的失政の記憶とルーラ自身の汚職疑惑の問題が依然として払拭されておらず、弱点となっている。

 現在のルーラへの支持は、単にボルソナーロに対する失望という否定的な評価の反映に過ぎす、本来であれば、より中道の候補に支持が向かうべきところ、適当な候補がいないという側面がある。第3の候補としては、汚職捜査で名を挙げたモロ元判事、民主労働党党首のシロ・ゴメス、現サンパウロ州知事のドリアなどがいるが、支持率は低く、いずれも8%以下である。

 モロ候補に期待する向きもあるが、モロがボルソナーロ政権の法務相に就任し、その後ボルソナーロと対立して辞任した経緯もあり、今のところ支持は伸びていない。モロは、数カ月前に入党したポデモス党からより政治力のある別の党に移籍するとの情報や立候補を断念するのではないかとの憶測も出ている。政治経験の無いモロについては選挙キャンペーンにおけるパフォーマンス次第であるようにも思われる。


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