2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年4月22日

 ボルソナーロは、2018年の選挙で示された、既存の政治家に対する幻滅を背景とする汚職撲滅、治安改善、経済活性化についての国民の期待を見事に裏切った。数々のいい加減な新型コロナ対策や民主主義・人権保護を損なう言動、アマゾン熱帯雨林の破壊、改善しない治安や汚職疑惑、外交的孤立などがありながら、いまだにこのような人物が指導者としての地位にとどまっているのが不思議であるが、トランプと同様の宗教的、感情的ポピュリズムの岩盤支持層がある。

「ブラジルのトランプ」実力行使あるか

 ルーラへの高支持率は、ボルソナーロに対する失望のはけ口としてのものであるので、今後の選挙戦は、国民生活に直結する経済政策をめぐる論戦となろう。特に、ウクライナを巡るロシア制裁措置による世界経済への影響は、資源輸出国であるブラジルにはプラスに働く面もあるが、原油価格の上昇等によるインフレは低所得層に大きな打撃となり、政権与党にマイナスに働くであろう。従って、低所得層に対する経済対策が極めて重要となる。

 ルーラは低所得層にも支持されており、このままでいけば、少なくとも決戦投票でのルーラの勝利は動かないように思える。問題は、ボルソナーロが敗北を認めず、実力行使に訴えることによりブラジル政治が未曽有の混乱に陥る可能性である。「ブラジルのトランプ」と呼ばれるボルソナーロによるブラジルの「1月6日」事件を防ぐには、圧倒的なルーラの勝利が必要なのかもしれない。

   
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